甲子園の風BACK NUMBER
日本文理、金沢など躍進の北信越勢。
甲子園の土を踏むのはどの高校?
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/07/25 11:30
日米の12球団から40人を超えるスカウトが集まった釜田佳直(金沢)。177センチの身長ながら、最速152キロを誇る速球とキレの良いスライダーを中心に、チェンジアップ、カーブ、フォーク、ツーシーム、カットボールなど多彩な球種を持つ
すでに敗退したが丹生の左腕・田中優貴は光っていた。
すでに敗れたチームにも触れると、丹生(にゅう)の左腕・田中優貴が光っていた。スカウトが「北信越で指名される左腕は田中だけだろう」と言い切る本格派左腕で、ストレートの速さはMAX145キロとも言われている。
私が見たのは22日の2回戦、大野戦で、このときの最速は140キロだった。投手の価値はスピードだけじゃない、とは日頃から言っている言葉だが、田中が投手の価値はスピードだと思っている以上、そこに焦点を当てるしかない。
投球フォームは悪くない。早い右肩の開きがなく、欠点らしきものは右肩上がりくらいなもの。ただ、上背がない(175センチ)ため、投球動作の各部分に少しずつ余分な力みが加わる。ボールに体重をかけようとしすぎて右(前)肩が上がるのもそのためで、ストレートが浮く原因になっている。
イメージが近いのが同じ北信越、高岡一(富山)出身の高橋聡文(中日)だ。176センチの上背を補おうとするような右肩上がりと、唸りをあげる快速球など、田中との共通点が多く見出せて興味深い。
前田健太とそっくりなフォームを持つ久下健斗(高岡一)が面白い。
富山は実力的に北信越の他県に劣るが、面白かったのが3回戦で敗れた高岡一だ。マスコミに大きく取り上げられた森本龍弥(2年・遊撃手)とともに、2年生エースとしてマウンドを踏んだ久下(くげ)健斗のフォームが前田健太(広島)とそっくりなのだ。
前田のフォームに悪いところはほとんどない。ということは久下のフォームも万全なんだな、と言われそうだが、本当に悪いところが見られない。投げに行くときの体の方向性にブレがなく、早い左肩の開きもない。ヒジが上がり、ヒジを起点とした腕の振りもよく、身長も180センチ以上ありそうで見栄えがする(富山県のパンフレットは資料性に乏しいのでこういう言い方をしている)。
ただ1つ前田と違うのがスピード。150キロ前後の快速球を持つ前田とくらべ、久下のストレートの最速は私が見た21日の富山戦が127キロ。他校の偵察隊らしき高校生に尋ねると、最速でも「130行くか行かないか」だという。フォームがいいのだから体力をつける努力次第では上へ行けそうだが、この体力をつける努力というのがなかなかできない。
話は突然、澤村拓一(巨人)に飛ぶが、澤村の最大の長所は、限界がないくらい自分を追い詰めることのできる練習好きの部分にある。それが久下にできるかどうかだが、今のフォームのよさや体の柔らかさを維持しつつ、体力作りに成功すれば大化けできると思う。