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対談:激動の欧州リーグ、今年の見所
~セリエA&日本人プレイヤー篇~
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byPICS UNITED/AFLO(L),Getty Images(R)
posted2009/08/30 08:00
[ 前半:リーガ・エスパニョーラ&プレミアリーグ篇はこちら ]
後半は、人気低落気味の元・世界最高峰リーグのセリエAと、リーグの健全経営がやたらと光るブンデスリーガ、さらに欧州CLの楽しみ方と、欧州リーグで活躍する日本人選手について。
前半と同様、気鋭のサッカージャーナリストのふたり、横井伸幸、原田大輔の両氏にお話を聞く。
対談の後半、話題はかつての「世界最強リーグ」セリエA。
パオロ・マルディーニやパベル・ネドベドの現役引退、カカやズラタン・イブラヒモビッチの流出により、スター不在の懸念がより顕著に浮き彫りになった今季。絶対王者に君臨するインテル、大型補強に踏み切ったユベントス、そしてレオナルド新体制で臨むミランを中心とするタイトル争いはどう動くのか。
1969年愛知県生まれ。90年代半ばからの約8年間をバルセロナで過ごしたサッカージャーナリスト。欧州メディアに豊富な人脈を誇る
原田 インテルに関しては、モウリーニョが希望する人材をある程度そろえたことで、魅力的かどうかは別にして、彼の真骨頂である“勝つサッカー”に徹することはできると思います。何より守備面での貢献が期待できるサミュエル・エトーの加入が大きいですよね。ボールを奪ってから10秒でゴールに到達する、どんなチームを相手にしても1-0で勝つ。そういうサッカーができれば、インテルにはチャンピオンズリーグでも十分に勝ち上がれる力がある。
横井 ただ、チャンピオンズリーグではどうしてもリーグの水準が結果に直結してしまうので、その点をどうクリアするかが課題でしょうね。シーズンを通じてハイレベルな戦いに身を置いていれば、大一番でも真価を発揮できる。でも、リーガ・エスパニョーラやプレミアリーグと比較してセリエAの全体的なレベルの低さは否めない。もちろん、インテルほどの戦力があればベスト8までは勝ち上がれると思いますが、本当のビッグクラブと対戦した時にどう戦うかがポイントになると思います。
原田 かつてのイタリア勢からは「サッカー界を牽引している」という気概を感じましたが、残念ながら今はない。昔から言われている勝利至上主義がスターの出現を妨げているのも事実だし、全体を見渡すと、アレッサンドロ・デル・ピエーロとフランチェスコ・トッティに代わるスターが一向に出てこないのも気掛かりです。
レオナルド監督のミランと古豪復活のユベントスが面白い。
1977年東京都生まれ。元『WORLD SOCCER GRAPHIC』編集長。サッカー専門編集会社『S.C.Editorial』を設立し、現在は代表取締役
横井 スター選手はリーグ自体の力や魅力を象徴する存在ですからね。最近ではイタリアでも人気回復にさまざまな試みが行われているようですが、コンフェデレーションズカップでもそうだったように、若い選手を使ってみようとする冒険心が感じられない。
原田 そうですね。ただ、リーグ戦に目を向けると、今季に関してはジェノアやナポリが積極的な補強を遂げました。フィオレンティーナやローマ、ウディネーゼなどを含めると、インテル、ミラン、ユベントスに次ぐチャンピオンズリーグ出場権争いはセリエAが最も白熱するかもしれない。
横井 僕はレオナルドが指揮を執るミランに注目しています。もしかしたら戦前の予想を覆す躍進を遂げるかもしれないし、逆に大コケする可能性もある。そういった意味で楽しみなチームですね。中途半端はやめてほしい(笑)。
原田 なるほど。僕はファビオ・カンナバーロが戻り、ジエゴとフェリペ・メロを加えたユベントスに期待しています。チャンピオンズリーグに固執せず、リーグ戦に集中すればタイトルの奪還も十分にあり得る。ユベントスにはクラブに染みついた“勝者のメンタリティー”があるし、今季のチームにはそれを体現しそうなオーラがある。本当の意味で、歴史の中で培ってきた“強さ”を取り戻すシーズンになる可能性を秘めていると思います。