ジーコ・ジャパン ドイツへの道BACK NUMBER
第2回:「アウェイでの暑さ対策が鍵を握る」
text by
木ノ原久美Kumi Kinohara
posted2004/01/28 00:00
2月18日から始まる2006年ワールドカップ(W杯)一次予選で、オマーン、インド、シンガポールと同じ3組に入った日本は、11月17日までの間にホームとアウェイで対戦する。これらの対戦相手はいずれもFIFA(国際サッカー連盟)ランキングで日本より下位につけているが、だからといってこの一次予選が簡単に終わると期待するのは早計だろう。この類の予選では、アウェイの試合がネックになる場合が少なくない。
例えば、1998年フランス大会の最終予選。日本は国立でウズベキスタンに6−3と快勝していいスタートを切りながら、2戦目に出向いたアラブ首長国連邦(UAE)で9月の酷暑に悩まされて大苦戦。なんとか引分けで終えたが、この試合が尾を引く形となって日本はその後の予選試合で苦戦し、約1カ月後の予選の最中に遠征先で監督交代という事態に発展した。その後は、コーチから昇格した岡田監督(現横浜Fマリノス)がチームを立て直し、日本はイランとのプレーオフを経て、ようやくフランス行きを決めた。
当時とくらべると、海外リーグでプレーする選手も、代表チームがアウェイで戦う機会も増えた。選手のレベルも経験も上がっているので徒に心配する必要はないだろうが、それでも、なにが起こるかわからないのが予選の怖さだ。
DF宮本(G大阪)も1月26日に始まった予選準備合宿で、「予選では想像以上のプレッシャーがかかると思う。それに耐えられるような精神力をつけ、身体も作っていきたい」と話し、警戒を示している。
今回は、9月8日のインドと10月13日のオマーンのアウェイ2連戦あたりが要注意か。というのも、夏にはアジアカップ(7月17日~8月7日、中国)や、U-23世代は予選突破すればアテネ・オリンピック大会(8月11日~28日)が予定されており、アテネ組以外も8月14日からJリーグのセカンドステージが始まる。そこへ酷暑のインドと中東での試合となれば、暑さや連戦からの疲労が心配される。
暑さ対策で気になるのが欧州組。国内組の選手らは、近年すっかり亜熱帯性気候となってしまった日本の夏を経験できるが、ヨーロッパの湿度の低い夏の暑さに慣れている欧州組にとっては、インドや中東あたりの暑さはかなり厳しいはず。アジアカップで夏の中国・重慶の暑さを体験できれば大丈夫かもしれないが、さもなければ、どこかで事前対策をする必要があるのではないか。
展開としては、このインドとオマーンのアウェイ2連戦までに勝ち点をできるだけ稼いで、優位を確保しておきたい。ホームの試合で勝つのはもちろん、得失点差で他チームをリードするためにもできるだけゴールは重ねたい。そして、アウェイでは負けないで勝ち点1は手にする。
予選グループ内の接戦という点では、一次予選よりも最終予選の方で起こりうる可能性は高いし、厳しいものになりそうだ。その状況を打破するためにも、また、そういう混戦を避けるためにも、決定力は必要。頼れるFW、流れを変えることのできるスーパーサブの台頭、得点を生み出すプレーの精度は、チームにとって大きな助けになるはずだ。
こう考えると、一次予選から単に勝つことだけでなく、チーム力のアップを念頭に試合を重ねることも忘れてはならないだろう。
(以下次回へ)