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<柏レイソルの復活請負人> ネルシーニョ 「信頼関係を生み出す温かく深い観察力」 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byDaisaku Nishimiya

posted2011/06/15 06:00

<柏レイソルの復活請負人> ネルシーニョ 「信頼関係を生み出す温かく深い観察力」<Number Web> photograph by Daisaku Nishimiya
昨年、圧倒的強さでJ1復帰を決めた柏レイソル。
戦略家の指揮官は選手たちをいかに導き、
今季の快進撃につなげたのか。その手腕に迫る。

 先行するイメージは、緻密な戦略家だろうか。Jリーグ黎明期のヴェルディでは、試合中のシステム変更で劇的なまでにチームを改善する采配が“ネルシーニョ・マジック”と呼ばれた。J1復帰1年目を戦うレイソルでも、このブラジル人指揮官の手腕は際立つ。

 自身も戦略家にして勉強家を自負する。

「レイソルはもちろん、色々な国のサッカーを勉強するんだ。いまならマンチェスター・ユナイテッドが好きだね」と、低い声音のポルトガル語が心地良さそうに響く。移動中の新幹線でも、身体を休めるよりDVDを観ることを選ぶ。

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 かつて日本代表監督にリストアップされ、レイソルで再び評価を高めているネルシーニョの本質には、実はもっと奥行きがある。強化本部統括ダイレクターの小見幸隆は言う。

「たとえば休み明けの練習では、グラウンドで選手を待ち構えている。歩く姿を、何気ない仕草や表情を、誰と誰が話しているのかを。監督に見られている感覚は、選手にもかなり浸透しているんじゃないかな」

 突き刺すような視線ではない。肌に心地よい微風のようなものである。ピッチをさらりと行き来する眼光には、それでいて明確なメッセージが込められている。

選手が何を考えているのか、日本人監督以上に敏感に察知する。

「何よりもまず、監督として自分が考えていること、チームとしてやろうとしていることを選手に信じてもらわなければならない。そこから信頼が生まれ、私の要求を素直に聞いてくれるようになり、戦術的なものが浸透していく。選手が自発的に努力するようにもなる。そのためにも、選手一人ひとりを観察するのです。練習への取り組みや目の前の出来事に対する彼らのリアクションを、見落とさないようにしないといけない」

 コミュニケーションに通訳が必要だから、観察力を研ぎ澄ませていると見なすのは短絡的である。ネルシーニョが秀でるのは、観察に基づく選手との距離感だ。ヴェルディ時代から彼を知る小見は、感心したように話す。

「選手が何を考えているのか、日本人監督以上に敏感に察知する。ちょっと悩んでいるような選手がいて、ネルシーニョに『どう、あいつは?』って聞くと、『もう話したよ』と。

 言葉が通じるだけに日本人監督がおろそかにしちゃいそうなところを、パッと埋めるというかね。対応が速い。監督が何を考えているのか、自分に何を求められているのかを、選手は理解できる。不安がないんでしょう」

 プロ15年目の北嶋秀朗は、「すごいなと思うんですよ」と切り出した。33歳のベテランをして、ネルシーニョは初めて出会うタイプの監督だというのだ。

「一度使わないという評価を下した選手は、どんな監督でも使わないもの。何か理由をあげて、だからダメなんだという感じで」

【次ページ】 ネルシーニョがレイソルにもたらした意識改革とは。

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