サハラマラソン挑戦記BACK NUMBER
ついにサハラ砂漠252kmを完走……。
地獄のマラソンを通じて分かったこと。
text by
松山貴史Takashi Matsuyama
photograph byTakashi Matsuyama
posted2011/05/13 06:00
ゴール後に完走メダルをかけてもらった。徒労感に襲われる
本当にありがとうございました。また会いましょう!
サハラ完走というゴールを立てたものの綿密な計画性など一切ない。とりあえず出版社だなと考えて文藝春秋に突撃するとNumber Webで書くチャンスを与えられ、このコラムを通じて、色々な企業やたくさんの人を巻き込み、完走を果たした。
一人だったら確実にリタイヤしていたと思う。
全く知らない何人かの方が、サハラマラソンを将来の目標にしてくれたことにより、「これだけトレーニングした自分が無理だったら、他の参加者のサハラマラソンに対するモチベーションは一気に下がるだろう」というようなよくわからない責任感を持てたり、砂漠で日々送られてくる応援メールによって、何度も勇気を与えられもした。プレッシャーは全く感じることなく、全ていい方向に作用した。
このサハラ活動を通じて知り合った方が、息子さんをこの4月にうちの寮に入れるという「事件」もあった。私のサハラマラソンへの挑戦により、和敬塾に入るその息子さんにとっては、幸か不幸か自分の知らない所で人生を変えられてしまったわけである。
東京外国語大学の亀山郁夫学長からも激励の言葉をいただいたりもした。
少しアクションを起こしただけでこれだけ世界が変わったのである。
好きなマンガの一場面に、武術の達人が武道に対する限界を感じた末に辿り着いたのは「感謝」だったというものがある。以前の私はそれを読み流していた。今、サハラマラソンを完走して、彼の心境が少し分かった気がする。これまでは「みなさんのお陰です」という枕詞のようなものも苦手だったが、今ならすごく良く理解できる。
本当にありがとうございました。
レースから1カ月が経ち、砂漠の記憶をどんどん美化していく傾向にある私だが、サハラに行って変わったことは特にないと思う。ただ、あらゆるもののハードルが下がったのは確かである。あれだけ厳しいことを経験したのなら、もう怖いものなんてない。
結局完走できるかできないかは、最初のエントリーをするかしないかの問題だったのではないか、と今になって思う。やはり、リスクを取り行動を起こすことが一番大事だったのである。
この活動が、地震を始めとする様々な問題で閉塞感に満ちるいまの世の中に一石を投じるものになっていれば、と切に願う。
正直なところ地震等の影響で価値観も変わり、そしてこの経験を通じて色々な事への可能性も広がったため……やる気は充溢しているのに何をしていいのか分からない、という不思議な状態になっている。
新たな挑戦なり、もし何か要望があれば、Number Web経由で「編集者W」ことNumber編集部の涌井さんへ、もしくはtwitter(@SaharaTakashi)にてご連絡下さい! スポーツじゃなくても構いません。
それでは、本当にありがとうございました。
近いうちにまた会いましょう!
まだ続きありますよね? Wさん。
松山貴史