サハラマラソン挑戦記BACK NUMBER

ついにサハラ砂漠252kmを完走……。
地獄のマラソンを通じて分かったこと。 

text by

松山貴史

松山貴史Takashi Matsuyama

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photograph byTakashi Matsuyama

posted2011/05/13 06:00

ついにサハラ砂漠252kmを完走……。地獄のマラソンを通じて分かったこと。<Number Web> photograph by Takashi Matsuyama

ゴール後に完走メダルをかけてもらった。徒労感に襲われる

そんな過酷なサハラマラソンもあと一日。頑張ろう。

 今日は何とオペラの演奏会が用意されていたが、到着が遅かったため鑑賞できず。残念だが仕方ない。いつもの如くメディカルに直行しエイミー先生にマメの治療をしてもらう。マメはひどいことになっているが、自分は他の選手に比べればかなりマシな方であった。マメ対策にと履いていた5本指ソックスに助けられた。

 空腹で死にそうだったので、なけなしのラーメンを食べ、即就寝。出発前は「夕方以降はヒマなのでメモ用にノートを持って行こう」と勇んでいたが、メモをするような体力は全く残されていなかった。

 そんな過酷なサハラマラソンもあと一日。頑張ろう。

●4月9日(土)レース7日目……6th stage Total 17.5km、 CP1:9km

 AM5:40起床。

 ベルベル人がテントを破壊する様子をムービーに収めるために早く起きていたが、中々来ない。あまりにも遅いので確認すると、どうやら最終日なので来ないらしい。やれやれ、彼らはいつも我々の期待を裏切る。

 朝食は昨日と同じく、スニッカーズと味噌汁。砂漠にチョコレートを持参するというのは日本のサハラマラソン界における革命ではないだろうか。夜の気温低下でチョコレートが再生するという発想はなかったはずである。来年以降の定着に期待したい。

 空腹感は否めないが、数時間後にはゴールなので気持ちはとても楽だ。

 スタート前、最終日なので日本人選手全員で記念撮影。過去の大会では、テントで気まずい空気が流れていた年もあったそうだが、今回は本当に仲が良かった。感謝である。

 AM9時前、スタート地点に集まる。いつもの音楽が今日は凄く懐かしい音楽に聞こえた。今日で終わりだという喜びよりも、今日で終わりなんだという、悲しみのような気持が先行してしまう。しかし、周りの選手はいつも以上にノリノリで、自分も自然と踊っていた。体は正直だ。早くシャワーを浴びたい。

 パトリック氏から激励を受け、一斉にスタート。

 昨日の影響で膝が痛い。膝だけじゃなく、足の甲も痛い。マメも痛い。肩も痛い。腰も痛い。体全体が痛い。そしてやはり少し犬の匂いもする。しかし今日はたったの18km。自ずと足が動く。道もなんだか楽そうだ。いつものような山や丘陵、崖の姿はみあたらない。むしろ少し市街地のような場所もコースに含まれているらしかった。

 ゆるゆると進みCP1到着。やはり今回のコースは楽だ。スタッフもどこか気が抜けた表情をしている。レース中、着用者の少ないミドリ色の目立つシャツを着ていたため、何人かのスタッフに良く覚えられていたようで、ここでも「頑張れ」と声を掛けられた。

 そんな声援を背に本当のゴールへと向かう。ゴール付近は市街地とあったので、少しコースを逸脱して砂漠に入り、支給されたペットボトルに砂を詰める。なんだか甲子園球児みたいだ。

 市街地に入ると、最後尾で人がいないため、物乞いの子供たちに囲まれ、襲われる。

 サイドポケットの、もはや主食となりつつあったハイチュウや、ボールペン、その他を奪われる。

 なんてこった。

 そして家に遊びに来いと誘われる。興味はあったが、コーラ購入で失格の例もあり、こんなところでリタイヤは笑えないので、振り切って進む。

【次ページ】 ついに……感動のゴールへ!?

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