野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
震災とプロ野球開幕騒動に想う……。
「今、自分たちにできること」
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byMiki Fukano
posted2011/03/18 10:30
「セ・パ両リーグともに開幕は遅らせるべき。自分達は夢を与える仕事だが今はそういう時期じゃない。これは今日選手全員から出た意見。そして12球団全ての選手が思ってる」 ダルビッシュのツイートより引用(3月16日18時頃)
何もできない……だから試合で稼いで義援金を送る。
我ら一般人は報道を観て嘆き、何もできない無力さに打ちのめされるだけだが、彼らは違う。野球選手には、野球選手にしかできないことがある。
そのひとつとして巨人が取った行動がある。
3月14日に岐阜で行われた阪神戦と、19日に甲府で行われるロッテとのオープン戦をチャリティー試合とし、試合の収益金を含む3000万円を義援金にあて、14日に225万円を集めた球場内での募金を19日のロッテ戦でも行なうなど、経済活動で範を示し、他球団もそれに続こうとしている(原稿〆切後、休止された試合もあり)。
要するに言葉は悪いが、何もできないのだから仕事をして金を稼ぎ、それを義援金として役立てればいいということ。それはパイこそ小さいが一般の我々の在り方としても通じる理論である。
ムキムキのダルビッシュを見ると元気が出る、ということ。
そして、もうひとつ。あるファンがこんなことを言っていた。
「ニュースで見たんですが、口では『野球なんかやれる環境じゃない』と言いつつも、ムキムキに筋肉の張ったダルビッシュなんかを観ていると、こんな最悪の状況でも自分のやるべきことはちゃんとやっているんだなと感心する。それを見て、自分も落ち込まず、できることをちゃんとやらなくちゃいけないなと」
勇気を与える、とか、そういうことはあまり言いたくないのだが、言葉を当てはめるならそれしか見当たらない。
被災地となった楽天。米田代表は「東北の人たちに元気、勇気を与えるのが我々の使命。それに向けていい形でスタートしたい」と語った。選手会長の嶋は「ユニホームを着たらしっかりやるしかない」と言い、山崎は「今はやれることをやる。少しでも力を与えられれば」と14日の練習試合で本塁打を放った。
彼らは自分にやれることをやろうとしている。地元をメチャクチャにされた無念、家族を心配する不安も一時忘れ、自分に与えられた仕事を忠実にこなし、東北の地元球団としての役割を理解し、心を奮い立たせながら復興の先兵になろうとしている。
それは、今現在も被災地で苦しむ人たちが無事生還した時、プロとして恥ずかしくないプレーを見せるため。そしてそんな姿は、次から次に起こる災害に打ちのめされた日本人に、「自分ができる仕事をやるしかない」と無言で訴え掛けてくる。