野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
震災とプロ野球開幕騒動に想う……。
「今、自分たちにできること」
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byMiki Fukano
posted2011/03/18 10:30
「セ・パ両リーグともに開幕は遅らせるべき。自分達は夢を与える仕事だが今はそういう時期じゃない。これは今日選手全員から出た意見。そして12球団全ての選手が思ってる」 ダルビッシュのツイートより引用(3月16日18時頃)
あの日の震災以来、日本列島の混乱が続いている。
野球界でも震災から2日間は予定されていたオープン戦が全試合中止。その後もKスタ宮城、QVCマリンフィールド、西武ドーム、神宮球場、横浜スタジアムの開催試合のほか、各チームの壮行会や、マリンで行われる予定だった堀幸一の引退試合も中止。
選手たちは合同練習、練習試合という名目で調整を進めているが、練習試合に臨んだ金本が「やってええんか?」と戸惑いの声を上げたり、ダルビッシュの「ボールを投げて、バットを振り回している場合じゃない」なんて発言が新聞紙上に出るように、選手たちから聞こえてくるのは「野球をやっている場合ではない」という声ばかり。
そんな中、焦点になったのは、3月25日に迫ったシーズンの開幕だった。
3月15日に行われた実行委員会では、予定通りの開幕を推すセ・リーグと、最大1カ月の開幕延期もやむなしとするパ・リーグで議論は割れた。
選手や監督など現場の意見は開幕延期なのだが……。
多数の死者を出した若林区荒浜から本拠地のKスタが10キロも離れていない楽天では、家族が避難所生活を強いられている選手もいる。
ロッテのQVCマリンでは駐車場が液状化現象に見舞われた。そんな被害を受けたチームがあるパ・リーグが予定通りに開幕することはどう考えても無理だろう。
一方、「復興の後押しとなる」と通常開幕を推すいわゆる“分離開幕”派のセ・リーグでも、東北・関東地方の電力不足によるナイター開催は現実的ではない。現に同じセ・リーグ内からも、ヤクルト小川監督が「プロ野球は高校野球と違い興行という面がある。開幕は遅らせた方がいいと思う」と私見を述べ、選手会の新井会長も「野球で勇気づけたいのは選手も同じ。だけど本当に今開幕していいのか?」という選手の総意を語るなど、大勢の意見は“開幕延期”に傾いているようだ。
「たとえお客さんがたくさん来なくても、野球人として責務を果たしたい」(巨人・清武代表)
「これ以上、経済活動を停滞させてはいけない」(阪神・沼沢本部長)
巨人、広島、阪神、中日などの球団関係者は、そんな言葉をもって通常開幕を訴えた。
プロ野球ファンからは「東北が大変な時に、自チームの利益しか考えていない」なんて声も聞こえてくるが、これら球団関係者の言葉も一理ある。