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「ソフトバンクなら誰が監督でも勝てる」のウソ…工藤公康ら11人の監督を知る男が証言「誰がNo.1?」選手起用が“当たる人・外れる人”の決定的な違い
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岡野誠Makoto Okano
photograph byNanae Suzuki
posted2025/04/05 11:00

12球団屈指の選手層を誇るソフトバンク
「金田さんは『やれ』なんですね。工藤監督は『やらないの? じゃあいいよ』なんですよ。球団が最先端の施設や器具を揃え、指揮官が勉強を重ねて必要なトレーニングを提供している。実際、推奨された練習をすると、結果が出る。その状況で放っておかれると、今の若い子は不安になる。たぶん、そんな精神面も見越していたと思います。数年前、工藤監督に会った時、『今、勝てないっすよ。練習してないですもん』と言ってました」
工藤公康はなぜ成功できたのか?
実は、就任当初の工藤監督はコーチや選手に自分の方針を押し付けていた。だが、日本ハムに11.5ゲーム差を逆転されてV逸した2016年オフ、考え方を変えた。著書でこう述べている。
〈上がってくる意見や提案も、表面的には聞いたものの、話し合いの最後は「私のやり方でやってください」で終わっていました〉〈リーダーが「私のやり方でやってください」と要求するコミュニケーションは、窮地に立たされたとき、とても脆いのです〉(※1)
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水上は工藤監督の変身を目撃しながら、ある特徴にも気付いていた。
「たしかに、『自分1人で、何でもかんでもやっちゃうとダメなんですよ』とよく言っていて、コーチの話を聞いていました。でも、異なる意見が出てくる時もある。だから、工藤監督は“決断するための準備”を欠かさなかった。選手をよく見ていたし、満遍なくコミュニケーションを取っていました。キャンプの時も、ファームの早朝練習から来ていました」
工藤監督はiPadに選手別に特徴、データ、自分の感じたことを書き込み、日々更新。シーズン中、遠征から帰ってくると、水上二軍監督を頻繁に食事に誘った。