プロ野球PRESSBACK NUMBER
「ソフトバンクなら誰が監督でも勝てる」のウソ…工藤公康ら11人の監督を知る男が証言「誰がNo.1?」選手起用が“当たる人・外れる人”の決定的な違い
text by

岡野誠Makoto Okano
photograph byNanae Suzuki
posted2025/04/05 11:00

12球団屈指の選手層を誇るソフトバンク
「二軍コーチが一軍コーチに選手を推薦すれば、監督の耳に入るわけです。本当に良いと思って伝えても、主観や思い入れが強い場合もある。そこで、二軍監督という客観的な立場からの意見を求められました。私が『あの選手は今、精神状態が良くないと思います』と言うと、工藤監督は『やっぱりそうですか』と反応していました。それほど、自分の目でよく見ていた。だから、選手起用が的中したのだと思います」
悩みの種「トレーナーとの関係」
コーチだけでなく、トレーナーなど裏方と呼ばれるスタッフとも綿密にコミュニケーションを取っていたという。
「本来、コーチとトレーナーは一体化しないといけない。でも、トレーナーが理論をもとに故障しないフォームを投手に助言しても、『俺たちの仕事だから』と遮断してしまうコーチが野球界にはいるんです。ソフトバンクは大学院でトレーニング理論を学んできた工藤監督のもと、意思統一が図れていた。それに、監督自身がトレーナーとものすごく綿密に話し合って、選手の体調を細かく把握していました」
ADVERTISEMENT
工藤監督は、短期決戦でも圧倒的な強さを誇った。クライマックスシリーズには6回進出して5回勝ち上がり、日本シリーズでは5度出場で全て勝った。普段から選手を注視しながら、準備を欠かさなかった賜物と言える。
「『普通にやれば勝てる』とドッシリ構えて、余計なことをしなかった。弱いチームだったら、短期決戦での奇襲は大事かもしれない。でも、猛練習を通して正攻法で勝つチームを作っているから、慌てる必要がない。工藤監督の本質です。西武時代の広岡(達朗)さんや森(祇晶)さんを見て、学んだのだと思います」
水上は、もう1人の名監督に「ご存命なら、今でも通用すると思います」と“打撃の職人”の名前を挙げた。張本勲や落合博満という曲者を率いた男の正体とは――。〈つづく〉
※1 2024年6月30日発行/書籍「プロ野球の監督は中間管理職である」

