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「ソフトバンクなら誰が監督でも勝てる」のウソ…工藤公康ら11人の監督を知る男が証言「誰がNo.1?」選手起用が“当たる人・外れる人”の決定的な違い
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岡野誠Makoto Okano
photograph byNanae Suzuki
posted2025/04/05 11:00

12球団屈指の選手層を誇るソフトバンク
「金田さんのキャンプの練習量は凄まじかったですよ。大学の室内運動場を借りて、まず400m×40周の16キロを走る。そのあと、100mを20本、50mを10本です。グラウンドに帰っても、ダッシュを繰り返していました。工藤監督は日によって違いますが、長距離やインターバル走など3種類を同じくらい走らせていた。金田監督はタイムを測っていなかったし、内回りするベテラン選手もいました。でも、工藤監督は基準の秒数に達しなければ、やり直しさせる。下手すれば、金田さんより厳しかったかもしれません」
工藤監督は現代的な練習だけでなく、古典的な鍛錬も取り入れていた。その際、筑波大学大学院で学んだスポーツ医学を生かしていた。
「懸垂とか、いわゆる昭和のトレーニングもするんですよ、選手たちは最初、嫌がります。だけど、『ほら、ここの筋肉が弱いだろ。懸垂をやれば、鍛えられるんだよ』と必要性を説明できるから、選手も納得していました」
「ソフトバンクなら誰でも勝てる」の嘘
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資金力も豊富で、補強に余念のないソフトバンクを率いると、「誰が監督をしても勝てる」という声が上がる。しかし、水上は「工藤監督だから5回も日本一になれた」と力説する。
「自分が仕えた中で、一番の指揮官でした。まず、とにかく練習をさせた。『自主性に任せる』は聞こえがいいけど、指導者が強制力を持たせないと、選手ってどうしても妥協しちゃうんですよ。落合(博満)さんも相当練習させたから、中日は強かったわけですよね。金田さんも猛練習で選手を鍛え上げて、日本一になった。『練習すれば強くなる』って当たり前ですけど、『練習させる』のは本当に難しいんです」
球界には「名選手、必ずしも名監督にあらず」という言い伝えがあるが、現役時代の実績は選手を動かす説得力になる。一方で、水上の知る金田監督と工藤監督の“練習のさせ方”には、時代による相違点があった。