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「全く真逆…今回はこう来たか」元世界王者・飯田覚士が注目した“絶対王者”井上尚弥の戦い方「キム・イェジュンにとって相当な衝撃だったはず」

posted2025/01/30 17:00

 
「全く真逆…今回はこう来たか」元世界王者・飯田覚士が注目した“絶対王者”井上尚弥の戦い方「キム・イェジュンにとって相当な衝撃だったはず」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

直前の挑戦者変更を受け絶対王者・井上尚弥はどう戦ったのか。異例の一戦のポイントを元世界王者・飯田覚士氏が徹底解説した

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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Takuya Sugiyama

   世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥が、代役挑戦者キム・イェジュンに4回KO勝利をおさめた。年をまたいだ試合延期と直前の挑戦者変更を受け、絶対王者はどのような戦い方を選択したのかーー。“異例の一戦”を元WBA世界スーパーフライ級王者の飯田覚士氏が前後編にわたって徹底解説する!<全2回の前編/後編へ>

かなり“嫌な試合”だったのでは…

 井上尚弥にとって初めての経験であった。

 延期に加えて直前になっての対戦相手の変更、そして世界的にまったく無名のランカーとの世界タイトルマッチ。WOWOW「エキサイトマッチ」の解説を務めるなど海外のボクシングにも精通する元WBA世界スーパーフライ級王者・飯田覚士氏は、井上サイドに立つと「かなり“嫌な試合”だったんじゃないか」と感想を漏らす。

 嫌な試合というのは気乗りしないとの意味ではない。何となく嫌なプレッシャーがのしかかっていたというニュアンスだ。

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「井上チャンピオンが試合後の会見で『疲れました』と言っていたのがちょっと印象的でした。ずっとチャンピオンクラスの強い相手とばかり戦ってきて、これだけ格の違う下位のランカーと世界戦をするのは初めてだと思うんです。圧倒的に勝つのは当たり前と見られて、ちょっとでも相手に見せ場をつくられたり、ダメージを受けるようなパンチをもらったりすることも許されないような雰囲気でしたから」

 1月24日、東京・有明アリーナでの4団体統一王座世界スーパーバンタム級タイトルマッチ。王者・井上尚弥の対戦相手は、WBO1位サム・グッドマン(オーストラリア)の負傷により同興行にリザーバーとして出場予定だった同11位のキム・イェジュン(韓国)に変更になった。

“格の違いを見せる”戦い方

 飯田が注目したのは1ラウンド。両者が様子見に徹した静かすぎる立ち上がりだった。

「尚弥選手はいつもしっかり腰を据えてスタートして、(相手の動きを)見切ってから腰を上げる傾向にあります。でも今回は、最初から腰の位置が高かった。“格の違いを見せる”にはどう戦っていけばいいか、と考えたなかでそうしたのではないでしょうか。(昨年5月)ルイス・ネリに1ラウンド、よもやのダウンを喫した反省を踏まえた前回(9月)のTJ・ドヘニー戦の立ち上がりはピリピリ感が凄かった。強くて重いジャブをぶち込むとか、ガードの上からでも思い切り叩き込んで威圧していったのがこれまで。それとはまったく真逆でしたよね。とはいえ気を抜くということじゃありません。自信満々のたたずまいを見せていくという選択に“こう来たか”と思いました」

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