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「阪神に行きたくねえな…」幼なじみが“まさかの阪神2位指名”でパニック…高校監督「阪神かホークスが2位、3位指名かもよ」ロッテ・田村龍弘のドラフトウラ話
posted2025/02/19 11:27

2012年10月25日、ドラフト会議。ロッテから3位指名を受けた光星学院高・田村龍弘(左)と阪神から2位指名を受けた北條史也
text by

中村計Kei Nakamura
photograph by
Sankei Shimbun
◆◆◆
田村が生まれて初めて「すごい」と感嘆せざるを得なかった選手。それは年々巨大化し、見たことのないような放物線を描き始めた大谷だった。
隣県同士ということもあり花巻東と光星学院は年に数回、練習試合を組んでいた。田村が大谷の成長曲線を回想する。
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「下級生のときは、まあ、普通にすごいなあぐらいでしたけど、3年ぐらいになってから、次元が違ってきたな、と。急激に体がでかくなったんで。ヤバいわと思いました。大谷はなんせバッティングがすごかった。あ、化けもんやなって思いましたね」
ただし、投手としての大谷の印象を尋ねると、当時の大方の関係者がそうであるように、途端に興味なさそうな顔をした。
「3年夏の前の練習試合で大谷が2イニングくらい投げてきたことがあるんです。そんとき160km近く出てたと思うんですけど、うちの打線にカンカラ、カンカラ打たれて。それは覚えてます。みんな『藤浪の方がいいな』とかなんとか言って」
「あんま、覚えてないですね」
3年夏の甲子園の決勝で、光星学院は春に続いてまたしても大阪桐蔭と全国一の座を争うことになった。
春と夏の藤浪は別人だった。春は藤浪から12安打したものの、3−7で敗戦。しかし夏はわずか2安打に抑えられ、0−3で完敗している。
光星を率いる仲井は春と夏の藤浪の違いをこんな風に語った。
「春はね、力任せに投げてたんだけど、夏はふわ~っと脱力していて、投げる瞬間だけバチーンとくる感じで。これはレベル高過ぎるな、と思いましたね。試合前にミーティングもやったんですけど、何を言えばいいかわからんかったもんな。結局、手も足も出んかった」
仲井とそんな話をしているタイミングでそばにやってきたコーチが横やりを入れた。