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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「『壊された人もいるらしいよ』ってビビッていた(笑)」井上尚弥とのスパーで五輪代表・原田周大が学んだもの…ロス五輪へ「技術より気迫」
posted2025/01/29 17:02
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Tadashi Hosoda
オリンピック熱に沸いたパリから帰国すると、1カ月近くは寝つきが悪かった。蒸し暑い熱帯夜のせいではない。深夜、自宅のベッドで目をつぶり、眠りに入ろうとすれば、いつも同じリングに立つ自分の映像が頭の中に映し出されたという。昨年8月、57kg級のボクシング日本代表として、五輪に初出場した原田周大は苦笑しながら振り返る。
「力は出し切りましたが、結果がついてこなかった。あの準々決勝で勝っていれば、自分の人生は変わったかもしれないなって。あと一つで銅メダル以上は手にできましたので。あの頃は、毎晩のように時間を戻して『もう一回、あそこの舞台で戦わせてほしい』と思っていました」
敗北の何とも言えない喪失感
リングの上で判定を待つ情景は、いまもよく覚えている。悔しさが込み上げ、応援してくれていた周りの人たちの顔も次から次に浮かんだ。試合内容から判定の結果は予想できたが、相手の青コーナーが青く光った瞬間、あらためて自らの敗戦を確認した。
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「これで終わってしまうのかって、信じられない感じで。持ち味の足を動かし続け、あきらめずに最後まで戦いましたけど、相手が一枚上手でした。引き出しが少なかったと思います。何とも言えない喪失感がありました」
パリのカフェで見たライバルの優勝
原田が掲げていた目標は、男子ではロンドン五輪日本代表の村田諒太以来となる金メダルの獲得。自分が立つつもりだった8月10日の決勝は、チケットが入手できずにパリのカフェテラスでテレビ観戦した。
リングで手を上げられていたのは、23年アジア競技大会のファイナルで打ちのめされた宿敵である。アブドゥルマリク・ハロコフ(ウズベキスタン)が歓喜する姿を目に焼き付け、しみじみと感じた。