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「『壊された人もいるらしいよ』ってビビッていた(笑)」井上尚弥とのスパーで五輪代表・原田周大が学んだもの…ロス五輪へ「技術より気迫」 

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杉園昌之

杉園昌之Masayuki Sugizono

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photograph byTadashi Hosoda

posted2025/01/29 17:02

「『壊された人もいるらしいよ』ってビビッていた(笑)」井上尚弥とのスパーで五輪代表・原田周大が学んだもの…ロス五輪へ「技術より気迫」<Number Web> photograph by Tadashi Hosoda

パリ五輪で金メダルを目標に掲げたが準々決勝敗退した原田周大。井上とのスパーの経験を血肉としてロス五輪を目指す

「やっぱり、強いなって。五輪には魔物が住んでいると言うけど、それをはねのけての優勝です。ハロコフを倒して、金メダルを取りたかったです」

とにかくすぐに次の試合をしたかった

 原田の切り替えは早かった。いても立ってもいられず、選手村のなかを一人で走っていた。帰国した2〜3日後には練習を開始。五輪出場のために休学している専修大の練習場に出向き、誰もいないお盆の道場でジムワークに励んだ。実家がある北九州に帰省しても、体を動かし続けた。周囲に「休めよ」と言われても、どうにも気持ちが収まらなかったという。

「次のロサンゼルス五輪へというよりも、すぐに試合をしたかったんです。9月に試合があると聞いたので、『やらせてください』と懇願し、モンゴルで開催された国際大会(ワールドボクシングカップ)に出場しました。体が思うように動かずに負けてしまったのですが、子どもみたいに『やってやるぞ』という意志だけは強く持っていました」

岡澤セオンの影響

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 幼少期から目の前の一つのことにしか集中できなかったという。それが、昔もいまもアマチュアボクシングなのだ。プロ転向への気持ちはなく、4年に一度の五輪に懸ける思いは並々ならぬものがある。五輪優勝の夢は潰えたが、心は折れていない。むしろ、さらに火がついている。東京大会から2大会連続で五輪に出場している岡澤セオンの影響も大きい。

「先輩のセオンさんからアマボクを盛り上げたい、貢献したいという熱い思いを聞かされ、心を動かされたこともあります。僕も、その夢を叶えたいと思っています。

 もちろん、プロの華やかな舞台も知っています。実際、昨年10月に後楽園ホールに足を運び、日本タイトルマッチを見たときもすごい盛り上がりだなと思いましたが、そこで僕もプロに行きたいとは思わなかったです。アマチュアのリングでも、これくらいできれば面白いだろうなと想像し、ワクワクしていました」

 夢を追う真っ直ぐな23歳は、きらきらと目を輝かせる。今年4月からは大学に復学し、スポンサーの支援を募ってアマチュアボクシングを続けていくつもりだったが、昨秋、思わぬ申し出を受けた。専修大に通っていたこともある大橋ジムの大橋秀行会長に声を掛けられたのだ。

【次ページ】 大橋ジムからの誘いが

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