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「すみません、阪神には行けません」星野仙一に断りの電話、その返事は? 原辰徳に誘われて巨人入り、メジャー球団の契約破棄も…中日“あの1億円エース”の今 

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岡野誠

岡野誠Makoto Okano

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photograph byJIJI PRESS

posted2025/01/30 11:04

「すみません、阪神には行けません」星野仙一に断りの電話、その返事は? 原辰徳に誘われて巨人入り、メジャー球団の契約破棄も…中日“あの1億円エース”の今<Number Web> photograph by JIJI PRESS

野口茂樹は原辰徳とも浅からぬ縁があった

1億円投手・野口茂樹の今…

 肉体を酷使して栄華を極めても、それゆえにケガを負い、衰えという現実に直面し、終焉を迎える。それが、プロ野球選手の宿命である。引退後、中卒や高校中退の選手が集まるNPO法人『ルーキーズ』のコーチ、石黒体育施設を経て、2017年から愛知県西尾市の『カミヤ電機』で営業を務めている。ペーパードライバーだった男は電気設備の仕事を取るため、車で県内を飛び回っている。

「現役時代に車を何台か買ったんですけど、結局乗らなかった。事故を起こしたら、プレーできなくなる危険性がありますからね。実家に全部あげました。野球を辞めたら、いくらでも運転できると思ってましたから。最初は怖かったですけどね」

 朝6時に家を出て、7時45分に会社に到着。1人で営業に向かったり、職人と一緒に行って工事の打ち合わせをしたりする。帰社後、パソコンで見積り書を作り、17時半には帰路につく。野球との縁も切れておらず、DAZNで中日戦の解説を務めている。

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「野球の仕事がある日は出社しなくていいんです。ホント、理解のある社長でありがたいですよ。春季キャンプも行かせてもらえますからね。帰ってきたら、お土産話を持って営業に向かいます。中日の話をすると、お客さんも喜んでくれるんですよ」

 子供の頃から野球だけに身を捧げ、現役を諦め切れなかった野口は、現在の会社員生活に満足しているのだろうか。

「仕事をしないと、食べていけないですからね(笑)。ぶっきらぼうにしていても仕方ないですし。まあ、なるようになりますよ。現役の時、年俸1億円といっても半分は税金でしょ。後輩と飯食ったり、好きなものを買ったり、競馬に注ぎ込んだりしてると、3000万円くらい使ってしまいますからね。そう残らんのですよ」

 エースと呼ばれても、その地位は永遠には保てない。現役復帰という理想を追い求めても、夢は破れる。良いことばかりは起こらない。だが、悪いことばかりも続かない。どんな時も今を必死に生きてきた野口茂樹は、冷静に現実を受け入れていた――。

<第1回、第2回も公開中>

※1 96年2月26日付/東京中日スポーツ 一連の発言
※2 96年3月3日付/東京中日スポーツ
※3 96年7月19日付/東京中日スポーツ
※4 96年8月12日付/東京中日スポーツ 一連の発言
※5 04年10月2日付/日刊スポーツ 優勝翌日の紙面で、8月7日の落合語録を掲載
※6 05年9月5日付/スポーツ報知

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「ずっと立っとけ!」中日“あの伝説的エース”に星野仙一が激怒した日…震えた“落合博満の監督就任”「ボク、落合さんを骨折させてるんです」

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