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「楽天球団のマイナスコメントをしたら、お金は払いません」楽天初代監督が語る“1年でクビ”のウラ側、驚きの覚書「消えた“楽天・清原和博”プランがあった」
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph bySankei Shimbun
posted2025/01/19 11:01
2005年最終戦。「田尾コール」が鳴り響くなか、花束を手にあいさつする楽天・田尾安志監督
「あっさり告げられた印象です。試合前、バレンタインに『田尾、来年も頑張ろうな』と言われて『いや、俺もう辞めるんだよ』と話したのを覚えています。だから、それまで水面化で進めていた補強の話もなくなりました。でも、最終戦のソフトバンク戦が終わった後に、ヤフードーム(当時)で胴上げしてもらったのは、野球人生の中でも一番嬉しかったですね。97敗してる監督の胴上げなんて恥ずかしいと言ったんですが、選手たちは『これは僕らの気持ちです』と譲らなくてね。僕のチームへの気持ちは伝わっていたんだと思いました」
3年契約だった監督を1年で解任された田尾氏だが、意外にも当時の心境はあっさりしたものだったという。
「僕は現役時代から単年契約しかしてなかったので、あんまり気にしてなかったですね。女房とも『しょうがないね』と話した程度。2年目、3年目の給料がどうなるかなんて考えてなかったです」
「球団のマイナスコメントはしないように」
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ただ、球団としては契約書を交わしているため、残りの給料を反故にはできない。シーズン後、球団は功労金という形で支払うと書面を出してきた。
「でも、覚書に『楽天球団に対するマイナスコメントをした時点で功労金の支払いはやめます』と書いてたんです。こんなのは功労金じゃなく口止め料じゃないですか。なので、球団に『これ功労金じゃなくて口止め料と書いてくれませんか。そしたら条件を検討しますので』と伝えました」
すると、三木谷オーナーから一度お会いしたいという連絡が来たのだった。これまでの不満や今後の楽天についてオーナーに伝えようと、田尾氏は「喧嘩するつもりで向かった」という。
「でも、オーナーの脇には球団社長、球団代表、相談役がいたんです。ああ、こんなときでもオーナーは1人じゃないんだなと。しかも、オーナーは開口一番『この度は色々とご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした』と下手に出るわけです。これでは喧嘩もできませんね。オーナーは続けて『残りの2年分の給料は僕のポケットマネーからすべてお支払いします』と言いました。でも、2年目は振り込まれていましたが、結局3年目はうやむやになって、ちょっとしか振り込まれていなかったですね」
壮絶な楽天初年度を経験した田尾氏。次稿では田尾氏の同級生である落合博満氏や中畑清氏とのエピソードを紹介しよう。
<続く>