箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「まさかの失速…レース後に号泣」箱根駅伝“あの天才ランナー”吉居大和22歳の今「臆病になっていた」…本人に聞いた「マラソン挑戦の時期は?」
posted2025/01/18 11:06
text by
田中仰Aogu Tanaka
photograph by
JMPA
◆◆◆
2025年1月2日、世帯視聴率30%に迫る番組で、ある兄弟の和やかな会話が映し出されていた。テレビのスタジオにいる兄・吉居大和と、1区で区間賞を取った直後の弟・駿恭。兄「おめでとう」、弟「ありがとう」というやりとりの後、数秒間の沈黙が生まれた。このシーンを笑いながら振り返る。
「番組の方が新しい質問というか、『弟さんの走り、お兄ちゃんはどう見ましたか?』みたいに聞いてくれるのかなと思っていたんです」
“箱根のスター”の苦悩
ADVERTISEMENT
吉居大和は大学時代、箱根駅伝で2度区間賞を獲得した。現在はトヨタ自動車の1年目。冒頭の会話が話題を集める前日、1月1日にニューイヤー駅伝を走っていた。
エース区間とされる1区を走った吉居は、区間12位だった。初めてのニューイヤー駅伝でトップと13秒差。「最低限の仕事はできた」と本人は言う。確かにそのとおりである。だが同時に、3年前の箱根駅伝1区を独走で区間新という、あの鮮烈なレースを見た筆者からすれば、ニューイヤーの結果をどう受け止めればいいのか、つかみかねてもいた。それはひとえに、箱根駅伝を10年以上追う、あるライターから聞いた言葉のせいかもしれない。
〈箱根駅伝でスターになった選手はその後、苦しむジンクスがある。陸上の大会としてはオリンピック以上ともいえるイベントだから、大学卒業後はモチベーションに悩む選手もいる〉
箱根の光はあまりに強い。兄弟の会話が話題になること自体、その人気を示す証左でもある。「箱根で活躍したランナーには、いずれフルマラソンを走ってほしい」と期待されることも多い。だからこそ結果を出せずにいると「あの選手は終わった」とささやかれる。箱根の影の部分とも言えるだろう。
「そこは難しさがありますね…」
吉居も箱根の影響力を認めてはいる。それでも、と少しだけ語調を強めて言い切った。