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「岳くん以上はいない」“フツーの中学生”が青森山田で柴崎岳先輩と出会い日本代表DFに「黒田さんの求めるものは…」高校サッカー青春ウラ話
posted2025/01/15 17:02
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Takuya Sugiyama
2学年上の「岳くん」が求めた高いレベル
若者ならではの憧れを理由に高校を選んだ少年にとって、2学年上に超高校級の先輩がいた意味は大きかった。室屋成にとって、あの出会いはその後の人生を大きく変えてくれた。
当時の青森山田高校で全国に名をとどろかせていたのが、柴崎岳である。2009年のU-17W杯ではネイマール擁するブラジル代表と真っ向勝負をして2-3で惜敗したメンバーの中心選手だ。さらに柴崎は高校3年生への進級前に鹿島アントラーズ入りが内定していて、この年代のスーパースターだった。
「僕が1年生のときの3年生ですからね。岳くんはチームの王様のような感じで、すごい先輩というイメージでした。ただ、練習中は確かに厳しかったですけど、ピッチの外では優しい先輩だったんです」
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中学時代はボランチを任されていた室屋だが、第1回で触れたように練習試合でサイドハーフとしてのパフォーマンスを評価され、青森山田から誘いを受けた。だから、高校入学時からはサイドが主戦場となった。ただ、巧みなドリブルで何人も抜いていくわけではなく、周囲からうまく使われることで輝くタイプだったとも言える。
そんなプレーヤーだったことも、柴崎との時間をより、有意義なものにできた理由かもしれない。練習中、2歳上の先輩の厳しさは理不尽さとは無縁で、一つひとつのプレーに高いレベルを求めるからこそだった。
パス一つにも、こんな言葉をかけられた。
「受け手のことを考えて、もっと質の良いボールを出さないとダメだ」
相手ディフェンスライン裏を狙う瞬間が遅れれば、こう言われた。
「もっと早く飛び出せ!」
どのようなタイミングで飛び出すと相手は嫌がるのか。良いタイミングで抜け出せるようにするためには、どんな予測をすればいいのか。一つひとつのアドバイスが選手として成長していくうえで役に立ったのは言うまでもない。
日本代表でも「岳くん以上はいないだろう」
ただ、サッカーの判断力や技術力を磨く以外に、柴崎の存在はメンタル面でも大きな影響を与えてくれたと室屋は考えている。それに気づいたのは、世代別代表に招集された時だった。