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「岳くん以上はいない」“フツーの中学生”が青森山田で柴崎岳先輩と出会い日本代表DFに「黒田さんの求めるものは…」高校サッカー青春ウラ話
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2025/01/15 17:02
2019年、国際親善試合での柴崎岳と室屋成。青森山田で磨かれた2人の才能が日本代表に並んだ瞬間だった
「個人的にはその後のサッカー選手としてのキャリアと、あの大会は別物だと思っていて。今振り返ってみると、『俺はどうして、選手権に出ることにこだわっていたんだろう?』と思うくらい、そのことしか考えていなかったんです。当時の自分にとっては、プロになることよりも、選手権に出ることの方が大きな夢だったので。だからこそ、選手権のために頑張った日々には価値があったと今でも感じていますし、すごく良い思い出として残っているんですよね」
ヨーロッパではクラブチームでスポーツをすることが基本だ。ゆえに、学校教育の一環として行われる大会も多い日本のありかたに疑問の声が挙がることはある。
ただ、室屋が強調したように、プロサッカー選手を目指していない子どもたちにとっても、本気になれる魅力が選手権にはある。
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「なぜ、すごく良い思い出になっているかというと、そういう夢に向かって、あの頃の全てをかけられたからです。それは自分の人生にとって大切な思い出になりました。だから、プロサッカー選手としてより、一人の人間として、大事な大会だったんですよ」
ちなみに、室屋は体育科(現普通科・スポーツコース)に通っていたのだが、1クラスに所属するおよそ30人の生徒全てがサッカー部員だった。そして、学校から徒歩で5分ほどの寮で暮らしていた。また体育科では、午後の体育の授業がサッカーの練習にあてられていた。そうした環境を含めて全てがサッカーのため、そして選手権のためにあったといっても過言ではない。
選手権はプロや大学以降で活躍する選手の登龍門として見られがちである。しかしサッカー人生の集大成と捉える高校生がピッチで見せた笑顔、流した汗や涙にも、大きな価値があることを忘れてはいけない。
黒田さんの求めるものは、ちょっとドイツっぽい
それほどの思いを持って、高校サッカーに没頭した象徴が室屋であるが――あの高校時代は後のキャリアにどんな影響をもたらしたのか。当時の監督であり、2024年に日本サッカー界の話題の人となった町田ゼルビア・黒田監督との思い出を含めて聞いてみると、こんな興味深いことを口にした。
「黒田さんの求めるものは、ちょっとドイツっぽいなと感じるんですよね」
〈つづく〉