「岳くん以上はいない」“フツーの中学生”が青森山田で柴崎岳先輩と出会い日本代表DFに「黒田さんの求めるものは…」高校サッカー青春ウラ話 

「1年生ながら選手権のメンバーには入れましたけど、試合には出られなかったんですよね。そもそも、中学ではボランチでプレーしてきたわけで、サイドハーフは僕にとって、やりなれたポジションではなくて。あの頃は『自分に合うポジションはどこなんだろう？』と考えたり、若干の行き詰まりを感じていました。だから、新たなサイドバックというポジションでプレーするのが楽しかったですね。その感覚は今でも覚えています」

最後の選手権で敗戦…室屋の目に涙はなかった

　人生の転機を思い出すとき――室屋は、柴崎との出会いに感謝する。

「代表にいけば高いレベルのプレーを要求されますけど、岳くんのおかげで慣れていました。それに、一緒にやったことで、妙な自信もついた感じがあって。（A代表を除いて）岳くんと一緒にやれたのはあの1年間だけでしたけど、その効果はものすごく大きかったですよね」

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　メキメキと頭角を現した室屋は、柴崎の代の卒業後、新チームが立ち上がりから主力となる。高校2年時は初めて憧れの選手権でレギュラーとしてピッチに立った。3年生として迎えた第91回の選手権では、1回戦の野洲戦、2回戦の修徳戦ともにPKの末に勝ち上がった。しかし、ベスト8入りをかけた3回戦で0－2と敗れた。そのときの相手は、星稜高校。中学3年生の室屋が、当時の黒田剛監督から見いだされた練習試合の相手だった。

高3時の選手権、星陵戦での室屋　©Kenzaburo Matsuoka/AFLO

　同大会の優秀選手には選ばれたものの、国立競技場でプレーする夢はかなわなかった。ただ、駒沢陸上競技場でのラストゲーム後、悲しみにくれることはなかった。

「負けたあとは涙も出ませんでした。『いやぁ、楽しかったなぁ。俺の夢、確かに叶ったな』という感じでした。当時の自分はプロになろうだなんて思っていなかったので、選手権に出ることだけが夢でした。だから、大会が終わったときにも、3年間頑張ってきて良かったという気持ちのほうが、はるかに強かったんです」

　そこから明治大学に進み、リオデジャネイロ五輪代表の主力としても活躍して、大学卒業を待たずにFC東京でプロの道へ。そんな室屋のストーリーを振り返るとき、どうしても、選手権で優勝できなかった悔しさが後の原動力になったと捉えられることもある。

一人の人間として、大事な大会で良い思い出なんです

　ただ、ごく普通の中学生だったと自認する室屋だからこそ、そんなステレオタイプな見方をやんわりと否定する。

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