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「年収は4000万円の選手も…」箱根駅伝“山の神”が率いる新チームの“規格外”…「陸上には稼げる余地が」「来年から本気でニューイヤーを狙う」
text by
泉秀一Hidekazu Izumi
photograph by(L)Nanae Suzuki、(R)公式インスタグラムより引用
posted2025/01/08 17:02
青学大では「3代目・山の神」として2度の優勝に貢献。実業団→プロランナーを経て選手権監督となった31歳は、これまでの常識に囚われないチーム作りを目指す
最も高いSランクの1500万円から、A+ランク1092万円、Aランク900万円と基本給が設定されている。この金額にインセンティブがプラスされて、最終的な報酬額が確定する。
もっとも、Sランクに格付けされるには、五輪代表や5000mや1万m、マラソンなどで日本歴代3位以内に入るといった厳しい条件が課される。これを満たせるのは、現役の日本トップランナーだけだ。
以下、A+は日本歴代20傑、Aは50傑と条件が変わっていくが、上位ランクの基準は厳しい。Aランクの歴代50傑でも、5000mで該当する現役選手は30人程度しかいない。
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以下、Bランク、C+ランクと続き、全部で8ランクに分かれている。ちなみに、タイム設定のない一番下のEランクの基本給は360万円で、トップと一番下とでは基本給だけで4倍以上も差があり、徹底した実力主義のシステムといえる。
また、インセンティブの内容は具体的には以下の通り。
ランクに関わらず、駅伝の選手としてニューイヤー駅伝の出場に導けば一人あたり200万円(現状は初年度のみ)、ニューイヤー本戦で優勝すれば500万円以上が支給される。もちろん区間賞を獲得すれば、さらにボーナスがある。
チームだけではなく、個人の成績やタイムもインセンティブの対象だ。日本選手権での結果や、五輪、世界陸上への出場は数百万円単位で報酬が増える他、そうしたトップ選手ではなくとも、毎年のシーズンベストが記録インセンティブとして支払われる。
例えば、5000mで13分40秒のシーズンベストに対していくら、というシステムだ。あくまでシーズンベストが対象なため、自己ベストを上回れなくても毎年、支給される。毎年安定して自分のパフォーマンスを発揮すれば、それが報酬に反映されるというわけだ。
「結果を出せば、数年でかなりの報酬を得ることも可能です。お金が全てではないですが、チームを選択してもらう際の一つの価値にはなると思っています」(神野)
脱「コストセンター」…陸上部を“黒字化”する方法は?
もうひとつ、MABPがユニークなのが選手たちの働き方だ。
多くの場合、実業団選手は時短勤務で、総務部などに所属して事務作業に従事する。ところがMABPでは、選手自らが陸上部の売り上げの一端を担う。
競技力の向上はもちろんだが、単にレースや練習に励むだけではなく、一人の社員として陸上部の運営にも積極的に関与することが求められるのだ。
例えば、ユニフォームのスポンサー営業には選手も同席する。選手の同席で成約率を上げる営業的な戦略に加えて、「スポンサーの意図」を理解することで、業界構造の理解にもつながる。
また陸上教室を事業として運営し、選手たちは走るコツを教える講師役を担う。競技以外とも接点をもちながら、陸上選手の社会的な存在意義を拡大していく取り組みだ。