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「神野は終わった」と言われても…箱根駅伝“3代目山の神”に新チームが“選手兼監督”オファーを出したワケ「もっと好記録の選手はいる。でも…」
posted2025/01/08 17:01
text by
泉秀一Hidekazu Izumi
photograph by
AFLO
青学大を卒業し、実業団に入って2年。神野大地は、2018年に大きな決断をした。会社から離れ、プロランナーとしての道を歩むことを決めたのだ。
その神野のプロ生活を語る上で、欠かせない人物がいる。青学大時代のひとつ上の先輩に当たる高木聖也だ。
箱根駅伝で神野が「山の神」になった大学3年時、4年生だった高木は主務という立場でチーム運営に携わっていた。2年で競技を引退し、3年からマネージャーに転向していた。
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主務はマネージャー陣の統括役で、選手とも頻繁にコミュニケーションをとる学生たちのまとめ役だ。主力ランナーだった神野と高木は学生時代から関係が深く、交流は卒業後も続いた。
「銀行を辞めて、僕をサポートしてくれませんか」
高木が新卒でメガバンクに就職して3年目。神野からプロランナーの相談を受けたのは、2017年12月のことだった。
銀行を辞めて、僕をサポートしてくれませんか──。打診された当時の心境を、高木はこう振り返る。
「メガバンクで働けば、安定した収入を得られます。実際、長く働くつもりで入社しました。でも、神野に声をかけてもらって、もう一度、陸上に関係できるんだとワクワクしてしまった。断ったら後悔するなと思い、感情で決断しました。まだ当時は、独り身でしたし」
こうして神野と高木の二人三脚での「チーム神野」によるプロ挑戦がスタートした。
プロ選手のネックになるのが、活動資金だ。チーム神野の場合、高木と2人分の生活費に加えて、大会参加費や国内外の合宿費も必要になる。
「初年度の計画では、合宿や遠征、レースなどに使う強化費だけで1300万円かかる計算でした。2人分の生活費を含めると最低でも2000万円の売り上げを作る必要がありました」(高木)