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「箱根駅伝を走れなくても…」青学大・原晋監督の妻が断言「マネージャーは社会に出て通用する」 競技を辞めた学生が寮母に告げた“深い言葉”
posted2024/01/03 06:02
text by
原美穂Hara Miho
photograph by
JIJI PRESS
今年も箱根駅伝が開幕する。前回大会で駒澤大に王座を明け渡した青山学院大は、どのような逆襲の走りを見せるだろうか。
原晋監督、そして学生たちを支えるのが、寮母を務める原美穂さんだ。寮母という立場から青学の強さの秘密を解き明かす、原美穂さん著『フツーの主婦が、弱かった青山学院大学陸上競技部の寮母になって箱根駅伝で常連校になるまでを支えた39の言葉』(アスコム刊)から、「青学のマネージャー論」に関する章を抜粋して紹介します(全3回の3回目/#1、#2からつづく)。
◆◆◆
箱根を走りたい、と青山学院大学陸上競技部の門を叩いた子のうちの何人かは、競技人生の半ばでマネージャーに転向します。自分からマネージャーになると言い出す子はほとんどいません。たいていの子が、監督からマネージャーになることを勧められ、まだまだ走りたい、マネージャーにはなりたくないと拒否し、抵抗してからマネージャーになります。やはりみんな、最後の箱根駅伝が終わるまで、ランナーでいたいのです。
あるマネージャーが寮母に告げた言葉
そうやってマネージャーになった子のうちのひとりが、あるとき、こんなことを言いました。
「マネージャーになって、初めてわかったような気がします。もし選手のときにこの精神状態を手に入れていたら、もっといいタイムが出せたと思います」
彼はマネージャーになって、それまでのマネージャーがどれだけ自分たちを支えてきてくれたかを理解したのです。それまで主観的にしか見ることのできなかった「選手」という存在を客観的に見られるようになって、たしかにガミガミいう監督のほうが正しくて、選手のほうがサボっているなとか、この選手はこのままではダメだなというようなことが、見えてくるようになったと言います。もしも選手時代、自分が周りからどう見えていたかがわかれば、努力が足りていないこともわかっただろうと言うのです。