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「彼らをサイボーグのように見ているのかなと…」高校駅伝“留学生3km区間規制”に元・仙台育英高監督が思うこと「本心で言えば残念です」
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph byJIJI PRESS
posted2024/12/22 11:02
大きなルール改正が決まった高校駅伝での「留学生起用」問題。かつてはエース区間の1区で留学生が集団で飛び出すシーンも目についた
しかし、最短区間への限定は「彼らの将来を閉ざしてしまうのでは」と真名子監督は危惧する。
「これまで彼らの走れる最長区間は男子の場合8kmで、その結果で進路も決まってきたわけです。でも、3kmの結果なんて実業団から見れば獲得するかどうかの指標にはなりません。そういう意味でも彼らの未来を壊してしまうのではないかと思うんです」
現在、仙台育英にはケニア人留学生が男女複数在籍する一方、台湾から一般入試で留学してきた男子選手もいる。新ルールは陸上が盛んなアフリカだけでなく、駅伝に憧れて来日する他地域出身の学生の活躍の場も「国籍」を理由に狭めかねない。
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「3kmの区間に限定というのは、彼らをひとりの高校生アスリートとしてどう見ているのだろうと。まるで機械やサイボーグのように見ているのかなと思ってしまいます」
留学生を、日本人選手と同じく一学生アスリートとして大切にするのか、それとも単なる「戦力」とみなすのか。真名子監督の言葉は、留学生への眼差しが後者に傾いている現状を鋭く突く。
トップ選手が留学生と競う機会が失われる?
留学生がレースに与える影響が縮小していけば、受け入れる高校自体も減っていくことが予想される。日本人のトップ選手たちが留学生と競い合う機会も失われかねない。高校スポーツの国際化が進む中、駅伝はますますドメスティックな競技になっていくのではないだろうか。
「他のスポーツはどんどん留学生を受け入れて活躍の場が広がっているのに『なんで駅伝だけ?』という気持ちはあります。一方、確かにポテンシャルが顕著に出るスポーツではあるので、日本人だけで頑張っているチームを考えると何かしらの策が必要だということも理解できます」
そして、真名子監督は言葉を重ねる。
「ただ、留学生を一番近くで見てきた立場からするとやはり残念です」
都大路において、身体能力の高いケニア人留学生たちが勝負を決定づけてきた面は否めない。しかし、影響が強くなったら規制をかけ、それでも強くなったらさらなる規制をかける。それを重ねた先に残るものとは、一体なんだろうか。規制ありきの議論ではなく、さまざまな角度から検証していく必要があるだろう。
<大学駅伝編へつづく>
【真名子監督のインタビューを動画で見る】こちらの記事のベースとなったロングインタビューは、【動画】「2年間が走馬灯のように…」大東文化大学・真名子圭監督、箱根駅伝シード権のための「トップダウン」《留学生の“規制”には疑問も》でお楽しみいただけます。