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「彼らをサイボーグのように見ているのかなと…」高校駅伝“留学生3km区間規制”に元・仙台育英高監督が思うこと「本心で言えば残念です」
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荘司結有Yu Shoji
photograph byJIJI PRESS
posted2024/12/22 11:02
大きなルール改正が決まった高校駅伝での「留学生起用」問題。かつてはエース区間の1区で留学生が集団で飛び出すシーンも目についた
「僕は正直なところ、本心で言えば残念です」
そう語るのは、大東文化大の真名子圭監督だ。
真名子監督は2012年から10年間、仙台育英の長距離男子ブロックの監督を務めた経歴を持つ。東日本大震災の影響とともに、前監督の退任に伴う主力選手の集団転校という事態に見舞われたチームを立て直し、2019年に都大路で12年ぶり8度目の優勝に導いた。その手腕が買われ、2022年に母校の大東文化大の監督に就任している。
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仙台育英時代には、2015年大会の3区で15人抜きの快走を見せたサイラス・キンゴリ、17年大会の3区で19人抜きを披露したルカ・ムセンビ、19年大会の6区で区間新をマークしたムチリ・ディラングら、複数のケニア人留学生を指導。大東大初の留学生であるピーター・ワンジル(4年)は、高校時代からの教え子でもある。
留学生のおかげで「日本陸上のレベルがあがった」
言葉や文化の壁に直面しながら奮闘する留学生たちを間近で見てきた真名子監督は、彼らの置かれた厳しい境遇を熱く語る。
「箱根駅伝が大きくなっているおかげでもありますが、日本人選手はある程度走力があれば、インターハイに出られなくてもスポーツ推薦で進学できるケースがほとんどです。
でも、留学生は高校3年間でしっかりとした実力を身につけ、発揮しなければ母国に戻らなければいけない。そういうプレッシャーの中で、誰よりも努力して苦労している姿を見てきましたし、彼らのおかげで日本の陸上のレベルがあがった面も絶対にあると思うんです」
仙台育英は初期こそ日本人選手の区間順位が20~30番台なども目立ち「留学生頼み」の印象も拭えなかった。だが、その後は留学生とともに日本人選手も全国トップクラスへと成長してきた。
2019年の全国優勝したレースでは、1区の喜早駿介が区間6位と好発進。2区の白井勇佑が区間賞の走りで3位へと引き上げ、その後もすべて区間一桁以内でつないだ。6区のムチリが先頭・倉敷高との差を48秒から5秒まで詰め、アンカーの吉居駿恭がラスト200mで逆転。留学生の働きもあったとはいえ、むしろ高い総合力で勝ち取った「優勝」だった。
また、ケニア人ランナーにとって日本で教育を受け駅伝で活躍することは、母国での貧困から抜け出すチャンスでもある。留学生の多くは高校を卒業した後も、日本の大学や実業団で走り続けることを目標にしており、都大路はそのアピールの場でもある。


