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留学生は“速くて当たり前”なのか?「どこかで特別視して…過度な期待をかけた」大東大の熱血監督が“愛弟子”留学生を箱根駅伝から外したワケ

posted2024/12/22 11:03

 
留学生は“速くて当たり前”なのか?「どこかで特別視して…過度な期待をかけた」大東大の熱血監督が“愛弟子”留学生を箱根駅伝から外したワケ<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

今年の箱根8区で区間最下位とブレーキとなってしまった大東大のピーター・ワンジル。高校時代から指導する愛弟子を真名子圭監督はどう見たのか

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荘司結有

荘司結有Yu Shoji

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Naoya Sanuki

 駅伝の流れを大きく変える「留学生」の走り。たびたび議論を起こす存在ではあるものの、チームにもたらす影響は絶大だ。一方で「速くて当たり前」という一元化されたイメージとのギャップに悩む留学生もいる。先日発表された箱根駅伝のチームエントリーで、メンバー外となった大東文化大の留学生、ピーター・ワンジル(4年)。仙台育英高時代から指導する真名子圭監督が明かす、留学生という立場の難しさ、厳しい決断の背景とは――。《NumberWebインタビュー全2回/高校駅伝編を読む》

 ピーター・ワンジルは大東大初のケニア人留学生だ。

 2015年に15歳で来日し、宮城・仙台育英高に入学。コモディイイダでの3年間の実業団経験を経て、2021年に21歳で同大に進学している。

 当時、大東大は2大会連続で箱根駅伝予選会敗退。本戦復活の起爆剤として白羽の矢が立ったのが、日本での競技歴が長いピーターだった。真名子監督は、前監督の馬場周太氏から相談を受けていたという。

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「僕は『もっと実力のある子がいいんじゃないの?』と提案したんです。でも前監督が言うには、うちはあくまでチームづくりの一環で、“助っ人”として走るのではなく一緒に強くなっていける選手、なおかつ日本になじみのある選手がいいと。どちらがいい悪いではなく、うちは留学生に対する視点が違ったのだと思います」

 ピーターの持ちタイムは5000m13分31秒97、10000m28分25秒20。5000mこそチーム内ではトップだが、“史上最強の留学生”と呼ばれた東京国際大のイエゴン・ヴィンセント(現・ホンダ)やリチャード・エティーリ(2年)、創価大のスティーブン・ムチーニ(2年)ら他校のケニア人留学生と比べると、力が劣ることは否めない。

「留学生」というだけで過度に期待される

 真名子監督は、高校時代からの愛弟子であるピーターの複雑な立場を代弁する。

「例えばヴィンセント君であれば、箱根は世界で戦うための通過点であって、それでいいと思うんです。でも留学生の間でも実力やポテンシャルの差はもちろんあって、ピーターは世界を目指せないところがある。

 彼も自分の実力をわかっているんです。他の留学生には勝てないし、日本人でも強い選手には負けてしまう。それでも『留学生』という言葉だけで過度に期待されることもわかっているので、複雑な気持ちがあったと思います」

【次ページ】 留学生だからこそ…箱根路で感じる重圧

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