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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
箱根駅伝5区、相手選手からまさかの声かけ「一緒にシード取れないぞ!」… 大東大・菊地駿介に聞いた、法政大との“奇跡の共闘”の舞台裏
posted2024/01/20 11:04
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
Nanae Suzuki
今年の箱根駅伝5区、シード権を争う順位を走っていた法政大学と大東文化大学の選手がゴール後、交わした抱擁が話題となった。法大の細迫海気(4年)と併走し、区間4位で大東大の9年振りシード権獲得に貢献した菊地駿介(4年)に後日、話を聞いた。(Number Webインタビュー全2回の第1回/後編へつづく)
競合の他校と異例のハグ
屈託のない笑顔が印象的だった。
箱根駅伝の往路5区、大東文化大の菊地駿介(4年)が区間4位の力走で芦ノ湖のゴールに飛びこむと、出迎えた仲間たちと歓喜の輪ができた。
注目されたのは次の場面だ。9秒遅れで法政大の細迫海気(4年)がゴールしたことを確認すると、菊地はすぐに彼のもとに駆け寄り、互いの健闘をたたえ合うかのようなハグを交わしたのだ。
このシーンが生中継されると、SNS上では「これぞスポーツマンシップ」「大学の垣根を越えた友情」と、微笑み合う姿を称える声が相次いだ。
まさかこんな展開になるとは
本人は今、そのことをどう思っているのだろう。菊地が照れくさそうに振り返る。
「箱根が終わった後、SNSを通して話をしたんですけど、細迫くんの方にもすごい反響があったみたいで、2人で驚いてました。彼と話したのは今回の箱根が初めてで、まさかこんな展開になるとは自分たちも想像していなかったので」
奇妙な友情は、どのようにして生まれたのか――。それまで話をしたこともなかった両者が、並ぶように坂道を登り始めたのは箱根山の中腹にさしかかった頃だった。
14位と厳しい位置で襷を受け取った菊地は、少しでも順位を上げようと前のランナーを猛追する。7kmの場所にある大平台まで来ると、順位は10位にまでジャンプアップしていた。その時、視界にとらえたのが、前を走る細迫の背中だった。
細迫に抜かれる…その時、声をかけられた
一度は追い抜いたが、細迫も離れない。併走がしばらく続くと、今度は菊地の方が苦しくなった。ハイペースで押してきたつけが回ったのか、ペースがやや落ち始めたのだ。