炎の一筆入魂BACK NUMBER
要因は投手の疲労のみにあらず…9月4勝16敗のカープが大失速で露呈させた「積極的な野球」と表裏一体の「綻び」
posted2024/09/24 17:01
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
JIJI PRESS
薄氷の下には、漆黒の闇が広がっていた。今季のセ・リーグペナントレースをリードしてきた広島は、9月に入り歴史的な大失速を見せた。22日までで4勝15敗。4日まで首位を守ったが、16日には自力優勝の可能性が消滅し、20日には4位に転落した。噛み合わなくなった歯車は、もがけばもがくほど空回りした。
振り返れば、薄氷を踏むような勝利の積み重ねだった。2人の外国人野手が開幕早々に離脱し、ともにシーズン中に退団する異例の事態となった。シーズン終盤になり得点力が上がった他球団とは対照的に、得点力は不足したまま。打線を組み替えながら戦っていかなければいけない状況は、シーズン終盤になっても変わらなかった。
総得点391点はリーグ5位(9月23日時点。以下同様)。9月の1試合平均2.5得点は、7月と同じ数値。それでも月間戦績は9月の4勝16敗に対し、7月は9勝10敗。借金1と踏ん張れたのは、月間防御率2.81ながら投手陣の奮闘があったからだ。
最大の武器である投手陣の運用には、何より気を配ってきた。先発投手の登板間隔が中6日未満で起用されたのは、5月11日の九里亜蓮と9月16日以降の森下暢仁くらい。前半戦は先発4本柱であっても、中7日以上の間隔を空ける配慮もした。9月に中5日が続いた森下には5月には中10日の猶予を与え、交流戦最終登板後には出場選手登録を抹消するなど、シーズンを通したマネジメントを行っていた。
「投壊」を招いた要因
それでも勝負どころの9月に綻びが生じた。月間防御率は4.39にまで悪化した。「疲労」を指摘する声も聞かれるが、失速の理由はそんなシンプルなものではないだろう。
今季の広島が5点以上差をつけた勝利は、優勝争いに加わった4球団で最も少ない11試合しかない。大瀬良大地の援護率はリーグワーストの1.69、床田寛樹も同3位の2.34の厳しい条件下で投げてきた。球数や投球回などには表れない消耗もあったに違いない。
首位で9月を迎えたことで優勝争いする他球団は広島包囲網を張り、主戦投手をぶつけてきた。先発投手が背負う1球の重みは増した。逆転勝利がリーグ最少タイの19試合しかない広島にとって、先制点が持つ意味は大きい。シーズン半ばまでは最少失点なら試合終盤まで任せられていたマウンドも、このところはビハインドの展開なら試合中盤であっても代打が送られるようになった。試合序盤に失点して劣勢になれば代えられるという焦りが、投球にも影響を及ぼしたように感じられる。