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「ワンチームでいこう」DeNA勝負の秋に、坂本裕哉27歳が語るブルペン陣の絆…「康晃さんや唯斗さんの発案で」ベンチ入り、ハイタッチも
posted2024/09/23 11:06
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
JIJI PRESS
数年前、横浜DeNAベイスターズの坂本裕哉が、ぽつりとつぶやいた言葉が印象に残っている。
「毎日必死でやっているけど結果が出ず、自分に腹立たしさを感じています。即戦力(ドラフト2位)で獲ってもらったけど、全然チームに貢献できていない。同期の伊勢(大夢)は活躍しているし、自分の中でもどかしさばかり感じてしまって……」
期待に応えられないジレンマ。瞳には影が宿っていた。
2020年のルーキーイヤーこそ球団新人左腕として1988年の野村弘樹以来となる初登板初勝利を飾り存在感を示したが、その後は先発のチャンスを与えられても、なかなか結果を残すことができなかった。心機一転、2022年シーズン後半からリリーフに転身するのだが、それでもなかなか浮上するきっかけを掴めずにいた。崖っぷちの日々、当然そこに焦りはあった。
とにかく「準備100%」で
しかしながら今季、坂本は生まれ変わったようなピッチングを見せている。
春季キャンプで左肩を痛め出遅れたものの、5月8日に一軍登録されると、以降は獅子奮迅の活躍でチームを盛り上げる。ビハインドの場面からスタートし、回またぎや火消し、さらにゲームによってはリードの場面でも任せられるようになった。今季はここまで44試合に登板し、1勝1敗12ホールド、防御率2.31(9月22日現在)と、貴重な中継ぎ左腕としてブルペンを支えている。
「いろんな人の助けがあって今があると思っています。もちろん好不調の波はあるんですけど、悪いときには次の試合で修正することを強く意識する。その繰り返しですね。40試合以上投げましたが、自分の中では、一試合一試合、一球一球、全集中することにフォーカスすることで積み上げた結果だと思います。とにかく『準備100%』を忘れずに、自分としては今までのキャリアの中で一番充実したシーズンが送れていると思います」
真っすぐな目で、坂本はそう言った。元来、真面目で練習熱心な選手である。時にその姿勢が精神面において自分自身を苦しめ、最適なパフォーマンスを導き出せないことが多々あった。しかし今季は、メンタル面で一皮むけた感がある。