プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「秋広、見ててつまんなくなかったですか?」巨人・阿部慎之助監督の辛口采配…100通り以上の“日替わりオーダー”でも、優勝を狙えるワケ
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2024/09/19 11:04
球審に選手交代を告げる巨人・阿部慎之助監督。今季100通り以上の“日替わりオーダー”を組んで首位に立っている(9月18日現在)
「秋広、見ててつまんなくなかったですか? 全く魅力も感じなかった。だから替えました。あんなちょこんとかやるんだったら、マン振りして帰ってきて欲しいですよね。そっちの方が魅力的だし、あんな上手くちょこんとかやって安打を打ってくれとはこっちも思ってないんでね」
試合後の指揮官の言葉はもちろん期待するからこその部分があってのものだ。ただ、内容が悪ければ、次の若手にシフトする。そうしてチャンスが巡ってくると、それを自分のものにしたのが浅野だったのである。だから浅野は凡退を続けても我慢して使い続けた。そうして次のステップへと昇ることができたのである。
“異例の3捕手併用”の効用
そして“猫の目打線”を生むもう一つの特長的な選手起用が小林誠司、大城卓三、岸田行倫の3捕手の併用である。3連勝した広島戦では、すべて違う捕手が先発マスクを被って勝った。
異例のことと言ってもいいだろう。
「優勝するためにはまず正捕手を固定する」というのは、常に語られてきた球界のセオリーである。もちろん主戦が1人で、多くてもサブを含めて2人でマスクを被るメリットはある。ただ後半戦に入ってからの巨人の強みは、むしろ捕手が固定されないこと。3人の捕手が次々と日替わりでマスクを被ることにある。
「配球を読むために捕手のリードの傾向を研究する」と語っていたのはアレックス・ラミレス元DeNA監督だった。3捕手はバッテリーを組む投手で、その日の先発が決まる。菅野智之投手は小林が、戸郷翔征投手は大城が、フォスター・グリフィン投手、山崎伊織投手には岸田がコンビを組む。そうして日替わりで捕手が変わることで、配球の傾向も日々変化する。捕手出身監督ならではの3人の活用は、守りを重視した結果だった。そして3人が入れ替わりでマスクを被ることが“猫の目打線”の理由の1つだが、むしろそれは今の巨人にとっては武器にもなっているのである。
さて今日はどんな打線を組むのか。
「打順がコロコロと変わるから選手が自分の役割を把握できない」
「打順にはそれぞれの役割があるのに、その役割に適していない選手を使えば打線は機能しない」
昨年はこうして様々な批判を浴びた巨人の“猫の目”オーダー編成だが……しっかりガバナンスが機能すれば、その“欠点”もむしろ優勝への大きな武器となるのである。