大舞台での経験とメンタルの強さ。修羅場を潜ってきた丸とベテラン2人で1、2番を組ませた。その選択が対広島3連勝につながり、混沌としたセ・リーグのペナントレースから、巨人が一歩前に踏み出す状況を作ることになったのである。

　オーダーをなかなか固定できない“猫の目打線”だから、生まれた選択肢ということもできた。

　そして今年の巨人には“猫の目打線”だから生まれる強さもある――。

　典型的な例が若手の積極登用と3人を併用する捕手の起用だ。

　就任1年目の阿部監督に課された命題は勝利と育成である。この二律背反するテーマに挑む今季、そのための若手の積極起用が“猫の目打線”の背景にはあった。

　レギュラー候補と言われた2年目の門脇誠内野手に、開幕先発したルーキーの佐々木俊輔外野手。やはりルーキーで門脇と遊撃のポジションを争う泉口友汰内野手もいる。また秋広優人内野手に中山礼都内野手、2年目の萩尾匡也外野手に、今やレギュラーポジションを奪う勢いの2年目の浅野翔吾外野手……そうした若手野手陣を次々と抜擢して、先発で使ってきた。

　まだまだ力不足は分かっていても、状態のいい時に先発で一軍の打席を与える。だからそこで期待を裏切るような内容を見せれば、容赦なく交代を命じてきたのも“猫の目打線”となる背景にあった。

「秋広、つまんなくなかったですか？」

　つい最近も秋広にこんな厳しい言葉が飛んだ。

　9月16日の中日戦。「6番・左翼」で先発起用したが、内容のない打席で2打席凡退すると、即交代を命じたのだ。

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