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大社の監督・石飛文太(42歳)とは何者か?「文ちゃんの高校時代なあ…プレーの印象ないな」“あの神バント”安松大希が地元記者に語った「ある言葉」 

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井上幸太

井上幸太Kota Inoue

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photograph bySankei Shimbun

posted2024/08/19 11:30

大社の監督・石飛文太(42歳)とは何者か?「文ちゃんの高校時代なあ…プレーの印象ないな」“あの神バント”安松大希が地元記者に語った「ある言葉」<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

大社高校を率いる石飛文太監督(42歳)

あの“11回神バント”…安松の話

 がんじがらめに近い状況で石飛は「原点に返ることにした」という。その「原点」とは何を指すのか。

「やるのは選手。選手たちが目の前の1試合を戦うのは、どんなときも変わらない。その原点に立ち返ろうと」

 選手たちがプレーしやすい環境の整備に注力し、対話を重ねた。練習メニューもトップダウンではなく、選手の意見をくみ取りながら練る。夏前のある日の練習では、主将の石原勇翔が「この前の練習試合のミスを確認したいんで、この後のメニューをゲームノックに変えてもいいですか?」と申し出て、石飛が快諾する場面があった。

 選手と重ねた対話は、甲子園でも生きた。

 早稲田実との3回戦の延長11回に、代打で起用された2年生の安松大希が、三塁線に絶妙なバント(記録は内野安打)を決めた。見どころの多い激闘の中で大きなターニングポイントとなるプレーを見せた安松は、中学時代に目立っていた選手ではなかった。

 兄の拓海(現・京都先端科学大)が昨年のチームで主戦を担っていた縁から、大社に憧れを抱いて入学を希望していたが、石飛は「中学時代に声はかけなかった」選手だった。

「お兄ちゃんの拓海の存在を見て、『大社に行きたい』と言ってくれていました。でも、ウチに来て試合に出れないで終わるよりは、出場のチャンスがある他校に行った方が幸せなんじゃないかと思って、そう伝えたんですけど、『それでも行きたい』と。本人の強い希望で入学した選手でした」

 実力が抜き出ているわけではない。それでも「なにがなんでも大社でやりたい」と強い意志を持って入学した姿は、かつての自分とも重なる。その姿勢を買おうと、対話を重ねて生きる道を考えた。導き出したのが、「捕手転向」と「バントの技術向上」だった。

「死ぬほど練習してきたんで」

 中学時代は捕手ではなかったが、チーム内で手薄だった捕手にコンバート。常に声を出すガッツを生かして周囲に認められると、投手陣を鼓舞するブルペン捕手の役割をつかんだ。攻撃では、168センチ、64キロの体でできることを思案し、ひたすらバントの技術を磨いた。

【次ページ】 島根大会の優勝時も…涙、涙

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