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「島根の公立」大社が大躍進のお隣で…全国最長“夏の甲子園9連敗中”「鳥取の私学」が思うこと「やっぱり全国で勝たないと」

posted2024/08/19 11:06

 
「島根の公立」大社が大躍進のお隣で…全国最長“夏の甲子園9連敗中”「鳥取の私学」が思うこと「やっぱり全国で勝たないと」<Number Web> photograph by KYODO

初戦で明徳義塾に敗れ、スタンドに頭を下げる鳥取城北ナイン。これで鳥取県勢の夏の甲子園は全国最長の9連敗となった

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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KYODO

 鳥取と島根。

 私立と公立。

 6年ぶりと32年ぶりの出場。

 初戦敗退とベスト8。

 隣県であるがゆえに、コントラストがくっきりと浮かび上がってしまう。

 この夏、鳥取城北が初戦で敗退した一方で大社が報徳学園、創成館、早稲田実と強豪を撃破し、93年ぶりの準々決勝進出と台風の目となっている。

 さらに、21年ぶりに夏の甲子園3勝を挙げた島根県に対し、鳥取県は今年の敗戦で不名誉な記録を更新してしまった。

 9年連続で初戦敗退。

 これは現在、全国で最長の記録であり、このなかには鳥取城北の3敗も含まれている。

「ここまで負けてしまうと、ほかからすれば『鳥取は……』と言われてしまいますよね」

 監督の大林仁が申し訳なさそうに言った。

鳥取県勢「最後のベスト8突破」は68年前

 甲子園で勝てていない現状。日本高校野球連盟に加盟する高校が47都道府県でも最も少ない24校であることも影響してか、鳥取県内の中学生の県外流出が増えているという。

 ちょうど100年前に鳥取一中(現:鳥取西)が準決勝に進出したように高校野球黎明期の鳥取県は強かったが、1956年に米子東がベスト4になって以降、ベスト8からも遠ざかる。

 2021年夏に鳥取城北の監督となった大林は鳥取県出身。そして、自身も同校でエースを務めたOBでもある。それだけに、「弱小」のレッテルを貼られてしまっている鳥取を憂い、さらには公立よりも環境が整う私立だからこそ、「強くしたい」という使命を抱く。

「うちは県外からも選手が来ていますが、それでも『鳥取で野球をやりたい』と思ってもらえるような魅力あるチームを作っていきたいんです。鳥取を背負って戦っていく以上は、県外のチームには負けたくありませんから」

 今年の3年生は、大林が声をかけて鳥取城北に招き入れた、いわば“1期生”だ。キャプテンでキャッチャーの石黒尚を中心に、県内出身の中学生たちは「鳥取を強くする」という監督の想いに賛同し、ここに来た。

【次ページ】 「心を成長させてくれることが大事」

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