甲子園の風BACK NUMBER
大社の監督・石飛文太(42歳)とは何者か?「文ちゃんの高校時代なあ…プレーの印象ないな」“あの神バント”安松大希が地元記者に語った「ある言葉」
text by
井上幸太Kota Inoue
photograph bySankei Shimbun
posted2024/08/19 11:30
大社高校を率いる石飛文太監督(42歳)
卒業後は県内の私立高である出雲西のコーチとしてキャリアを積み、公立校の教員となった2011年から母校である大社のコーチを約5年間務めた。
その後、他校の卓球部顧問を務めた後、2020年の人事異動で再び大社へ。部長を経て、同年秋から監督に昇格している。監督就任5年目でつかんだ、32年ぶりの出場だった。この32年の時間について、石飛はこう語っていた。
「選手として3年。コーチとして5年。監督として今年が5年目なので、外から見ている時期がありながらも、32年の半分ぐらいは関わっていることになります。やっぱり、監督として中に入ることで感じた難しさやもどかしさがありました」
エース馬庭優太はなぜ大社に?
先述の通り、第1回の夏の地方大会から出場を続ける伝統校。勝ち上がるとともに「公立校が見せる快進撃」の見出しが躍るが、県内の公立校では唯一の体育科があり、例年入学する選手の質は県内でも上位だ。“公立志向”が根強い県民性も相まって、私立が熱心に声をかけた選手が、大社に進むケースも幾度となくあった。
現チームのエースである馬庭優太は、所属した中学の部員が少人数だったこともあり、公式戦の勝ち星には恵まれなかったが、ある県内私立高の監督が「高校野球の指導者で、この感じの左が嫌いな人いないでしょ」と評するほど、制球力などのゲームメイク能力が評判だった。複数校から声がかかった状況でも大社に進んだように、甲子園を逃しても、「選手に選ばれる学校」ではあったのだ。
他校に劣らない選手層を有するだけでなく、これまで春夏計10度の甲子園出場もあり、歴代のOBや保護者からは「なぜ勝てないのか」など、様々な声が挙がる。甲子園から遠ざかるほどに、その声は大きく、強いものになる。全国の古豪で多かれ少なかれ見られる事象だが、大社も例外ではなかった。