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早稲田と慶應で甲子園に出場!?…新たな「ブランドグローブ作り」に挑む“超名門出身”鈴木兄弟とは何者か 現状は「大手5社が7割以上のシェア」 

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清水岳志

清水岳志Takeshi Shimizu

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posted2024/08/20 11:00

早稲田と慶應で甲子園に出場!?…新たな「ブランドグローブ作り」に挑む“超名門出身”鈴木兄弟とは何者か 現状は「大手5社が7割以上のシェア」<Number Web> photograph by Takeshi Shimizu

慶應高と早稲田実業でともに甲子園に出場した裕司さんと健介さんの鈴木兄弟。大手がシェアのほとんどを握るグローブ界に新風を吹かせようとしている

 そしてグローブを買った人にはノートをプレゼントする予定だ。これは野球ノートになるようなものだ。兄弟にとってノートは日記を付けたり勉強道具でかかせないものだった。毎日使って考える力を付けてほしいという願いも込められている。

 2月1日に正式に事業を立ち上げた。社員は二人で裕司を代表とした。二人ともサラリーマンも続けるのでプライベートでの活動ということになる。会社規則の範囲内で社内承認も得ている。

 会社名は『YK BROTHERS』。裕司、健介の頭文字をとっている。ブランドの信念は『BE A THINKER.』だ。文字通りだと考える人になれ、ということになる。

 ロゴは兄弟の出身、埼玉県の県鳥のシラコバトをモチーフにした。若人が未来に飛び立つイメージだ。

 グローブに関して特に裕司は思い入れがある。大学で初めてレギュラー獲得をした3年生シーズンの全国選手権決勝で、自らのタイムリーエラーで日本一を逃がした。それがコンプレックスになった。練習に没頭するために自分の分身となってくれるもの。エラーに対しての不安を払しょくし、プレーに集中できるグローブが欲しかった。

違う道を選んだ兄弟だからこそできたグローブ

 道具には自分たちの想いがこもっている。グローブの製作工程には微妙な肌感覚が伝わるように、自分たちも細かく携わっている。ここまで来るのに、二人の進路選択が違ったことによって未来の幅が広がった印象がある。健介が兄の後をついて行かなかったことが興味深い。

 健介が早稲田を選んだ理由は斎藤佑樹の夏の甲子園優勝で憧れを持ったこと。2つ上に兄がいれば常に裕司の弟、と言われて比較されるだろうし、やはり自分の道を歩きたい、ということだった。

「子供のころから“意思なき者に道はなし”という言葉が好きで、色紙に書いて貼ったりしていました。人に言われて決める進路だと最後、きつい時、苦しい時とか歯を食いしばれないなと子供ながらに思ってたんです」

 ひねくれていたのかもしれないです、と笑った。両親は慶應を勧めたそうだが、兄と違う道を選んだことはいい化学反応を起こしたようだ。

「違う考え方で山を目指したからこそ、お互いにいい影響を残してるな、と随所で感じます」

 兄弟の仕事も業種は異なる。裕司はまず営業部署を希望した。

「とにかく新しいステージでも一番を目指したかったんです。希望通り、営業部署の大阪の配属になり、お客様にも恵まれて、数年後に西日本で一番になりました」

 そこからウイスキーのマーケティング部署に移り、今は未来の新規事業開発を担当する部署にいるが、そこで学んだことがある。

【次ページ】 「野球界やお世話になった人に恩返しする」

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