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張本美和16歳の表情が…団体決勝で“ある異変”「中国を五輪で初めて本気にさせた」それでも高い王者の壁…元代表監督が現地で見た“決定的な差”
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byJMPA
posted2024/08/12 06:01
卓球の女子団体決勝、中国に敗れた日本。「どこか試合を楽しんでいるように見えた」張本美和16歳の恐るべきポテンシャルとは
村上 ダブルスと3番手のシングルスで起用された王曼昱は元世界王者(2021年の世界選手権女子シングルスで優勝)ですが、中国の選考レースでは王藝迪に次ぐ4番手でした。ただ、王藝迪が去年の世界選手権とアジア大会で早田に敗れたことで、今回は王曼昱が抜擢される形になった。「自分が選ばれたからには」という責任感があったんでしょうね。それにダブルスさえ勝てば、あとの2勝は孫穎莎が取ってくれる。そんな計算もあったのかもしれません。
「王に劣っていなかった」張本美和16歳の可能性
――中国としては初戦のダブルスに勝利したことで、あまり重圧なく2戦目、3戦目を戦える形になりました。
村上 もしダブルスで日本が勝っていれば、序盤にいい形で孫をリードしていた平野も、3戦目の張本も、もっと勝利に近づけたのではないかと思います。
――とはいえ、張本選手は王選手から先に1ゲームを取るなど、互角の戦いを見せてくれましたね。
村上 いけるんじゃないかという雰囲気はありました。張本にとって、王はやりにくい相手ではなかった。スピードにしてもパワーにしても、なにかすごく劣っている部分というのがありませんから。相手が長身で、すこし下がってくれるタイプだったというのもありますね。考える時間がもらえて、ミスが少なくなるので。
――張本選手の試合中の表情も印象的でした。相手の好プレーでポイントを奪われても、どこか試合を楽しんでいるような雰囲気を感じたのですが、いかがですか。
村上 王との試合はとても冷静に見えました。準決勝のドイツ戦、4戦目の最後にラブゲームで勝ったのが大きいんじゃないでしょうか。あそこでオリンピックの雰囲気に慣れて、自信を持って実力を発揮できるようになった。張本にとって大きな経験だったと思います。
――試合後もドイツ戦のような涙はなく、さわやかな笑顔で「持っているものを出し切れた」と語っていました。張本選手の明るさが戻った理由はどこにあったのでしょうか。