卓球PRESSBACK NUMBER
張本美和16歳の表情が…団体決勝で“ある異変”「中国を五輪で初めて本気にさせた」それでも高い王者の壁…元代表監督が現地で見た“決定的な差”
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byJMPA
posted2024/08/12 06:01
卓球の女子団体決勝、中国に敗れた日本。「どこか試合を楽しんでいるように見えた」張本美和16歳の恐るべきポテンシャルとは
村上 やはり格上に向かっていくときというのは楽しいものです。トップの選手に自分はどこまで通用するのか。それが選手にとって大きなモチベーションになります。精神的にもすごくいい状態だったんでしょうね。立派なチャレンジを見せてくれました。
――張本選手の今後の可能性についてはどう考えていますか?
村上 まだ16歳ですからね。身体的な伸びしろという意味では大きなものを持っていますし、4年後のロス五輪で中心になってくれることを期待したいです。今回得た自信が高い集中力につながり、集中することで感覚もどんどん良くなっていく。加えて張本の場合、苦手な戦型がないというのも強みです。しばしば番狂わせを起こす格下の“イヤなラバー”を貼っている選手も苦にしない。トーナメントでも安定した成績を残せると思います。世界のトップにいけるポテンシャルは持っていますから。
日本と中国の“決定的な差”
――日本の善戦が目立った一方で、「ここぞ」の場面での中国の底力、粘り強さは驚異的でした。勝敗を分けた日本と中国の差は、いったいどこにあるのでしょうか。
村上 一番のポイントは守備力です。中国の選手たちは、打たれても抜かせない守備力を持っている。そして守備力があるからこそ、9-9、10-10の場面で難しいボールを打たない。相手に先手を取られても我慢強く返していく。日本の選手は、相手の返球が少しでも甘いとすぐ勝負にいってしまう。そこが大きな違いです。
――中国の選手からは瀬戸際での精神力の強さを感じるのですが、メンタルよりも技術ですか。
村上 よく「メンタルの違い」と言われますが、メンタルだけを鍛える方法はないんです。戦術と技術で上回って、初めてメンタルでも上にいける。まずは守備力を鍛えて、どんな状況でもきっちり返す。そこを徹底するのがなにより重要だと思います。あとは戦術的な引き出しを増やすこと。たとえば中国の選手は、試合終盤にそれまで温存していたサーブを出して、レシーブのミスを誘うことがよくあります。日本の選手も手札をより増やしていく必要があるでしょうね。