MVPは早田ひなでも張本美和でもなく…

――早田選手の左手のケガというアクシデントがありながら、中国との決勝まで勝ち上がったチームは素晴らしかったと思います。結果は銀メダルでしたが、表彰式でもとてもいい表情をしていました。なぜ、これほど一体感のあるチームになれたのでしょうか。

村上　早田ひな、平野美宇、張本美和、それにリザーブの木原美悠。彼女たちがいい仕事をしたのはもちろんですが、この4人だけではなくて、卓球界の特性も大きいと思います。小学生から団体戦があり、チームとして戦うことを学んで、それを中学、高校、インカレ、Tリーグと積み上げてきた。みんな物心ついたときからチーム戦というのを心得ているんです。「誰が代表になっても大丈夫」という安心感があります。

©Naoya Sanuki／JMPA

――団体戦のMVPをあえてひとりあげるなら、どの選手ですか？

村上　ダブルス、シングルスで一番多くの試合に出た平野ですね。今大会は本当に好調でしたし、オーダーに応じてしっかりと役割を果たしていました。平野と早田はいま24歳ですが、科学的なトレーニングや栄養管理が進歩した現在のスポーツ界では、20代後半になっても身体的なピークから落ちることはありません。モチベーションさえ上げられれば、まだまだこれから中国との差を縮めていけるんじゃないでしょうか。

日本チームのMVPは「一番多くの試合に出た平野です」 ©Naoya Sanuki／JMPA

――現地でご覧になった村上監督の目線から、今大会の総評をいただければと思います。

村上　オリンピックの決勝という舞台で、初めて中国を追い詰めた感じがありました。結果は0-3でも、どのゲームもチャンスがあった。会場の95％は中国の応援でしたが、観客も「あれ、いつもと違うな」と感じていたはずです。これまで中国と互角にラリーをしたオリンピックの団体戦はありませんでしたから。相手を“超本気”にさせた素晴らしい戦いでした。

　このパリ五輪に向けてライバルとして過酷な代表争いをしていた選手たちが、代表に決まってからはお互いのいいところを引き出して、支え合い、本当にいいチームになった。心から称賛を送りたいと思います。

「ライバルとして過酷な代表争いをしていた選手たちが本当にいいチームになった」 ©Naoya Sanuki／JMPA