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夏の甲子園「朝・夕方2部制」“素朴な疑問”…高野連担当者に記者が直撃「収益が上がるのでは?」「聖域に手を付けた?」質問にどう答えたか 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2024/08/09 06:00

夏の甲子園「朝・夕方2部制」“素朴な疑問”…高野連担当者に記者が直撃「収益が上がるのでは?」「聖域に手を付けた?」質問にどう答えたか<Number Web> photograph by Kyodo News

2部制が導入された夏の甲子園。阪神園芸が作業する中で、観客の入れ替えも進んでいた

「甲子園がリニューアルされる前は、球場内にレントゲン室があり、全国大会前の投手検診時には使用していました。リニューアルの際に撤去されることになり、投手の検診は大会前に地元で実施してもらうことになりました。大会の時にはバックネット裏に医師の先生と看護師さんに待機していただいています。

 でも、本来の医療行為をする場所ではありませんから、限界はあります。球場の近隣にある4~5カ所の医療機関にお願いをして、選手に何かあればすぐに受け入れてもらえる体制を作っています。もちろん、一般の方も状況によっては、病院に搬送する体制をとっています」

3時間半超は“あの早実-駒大苫小牧”しかない

――今回の改正では、第1日の第1試合(午前10時開始)は13時半、第2、3日の第2試合(午前10時35分)は14時半時点で試合が終わっていない場合、原則として継続試合(サスペンデッド)になるとのことですが。

「コールドゲームにしないのか、というご指摘もありますが、2000年以降で3時間半を超えて決着がついていなかったのは1試合だけなんです。今はタイブレーク制もあるので、こうした事態はまず起こらないだろうと思っています」

 なおその1試合とは、2006年夏の決勝、早稲田実の斎藤佑樹と駒大苫小牧の田中将大が投げ合った早稲田実対駒大苫小牧戦だ。当時はタイブレークも導入されておらず、試合時間3時間37分、延長15回で引き分けになった。

――日本サッカー協会(JFA)は、2016年からWBGT(湿球黒球温度=気温、湿度、日射・輻射などの周辺熱環境を総合して計測する“暑さ指数”)が31度を超えることが想定される場合は、基本的に試合を中止または延期する、と決めたが、高校野球ではそうした措置の検討はしなかったのでしょうか。

「検討はしていますが、野球は試合時間2時間のうち、約半分は打者、走者以外はベンチで待機しています。プレー形態や運動量が違いますので、サッカーの事例をそのまま取り入れることはできないと思います」

――今年は3試合の3日間と、準決勝以降で開始時間を変更したが、次は4試合の日程でも時間変更を考えているのでしょうか?

「今回初めて実施する2部制が、我々関係者全員がイメージしている通り動くのかどうか、天候の問題もありますし、それを確認してからとなります。メディアの皆さんから“これはやはり無理ではないか”といった意見も頂戴するかもしれませんし、そうなるとまた考え直すことになるかもしれません」

「聖域に手を付けた?」質問への答えは…

――今回の変更は「日本高野連がついに動いた」という印象があります。甲子園の高校野球は「揺るがすことができない聖域」だと思われてきたが、その聖域に手を付けたのは大きな決断だったのでは? と思います。

【次ページ】 「聖域に手を付けた?」質問への答えは…

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井本亘
早稲田実業高校
駒大苫小牧高校

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