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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
高校野球“酷暑対策のリアル”「関係者が凍ったペットボトルを」夏の甲子園より試合数が多い地方大会観戦後、高野連担当者に見解を聞くと…
posted2024/08/09 06:01
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
JIJI PRESS
都道府県の高野連の関係者と話していて「夏の甲子園の予選が」と口にすると「違います。〇〇県選手権大会です」と訂正されることが多い。
夏季に行われる各都道府県の選手権大会の優勝校が「全国高等学校野球選手権大会」に出場できるのはその通りだが、都道府県の選手権大会と「夏の甲子園」は、独立した別個の大会である。
「暑熱対策」は各都道府県大会も対応することに
都道府県の高野連は、日本高野連に加盟している。当然、密接な関係にあるが、上意下達で動く組織ではなく、別の法人だ。
各都道府県高野連は別個の歴史を有し、運営形態も異なっている。日本高野連は公益財団法人だが、多くの都道府県の高野連は一般財団法人である。本部も、連盟トップが勤務する学校であったり、ビルの一室であったり、新聞社内であったり様々だ。そうした組織が寄り集まって硬式、軟式の「男子高校野球」を統括している。
金属バットの改定、ホームページのリニューアル、甲子園大会の試合開始時間の変更など、今年に入って、日本高野連は矢継ぎ早に改革を推進している。これらは都道府県高野連が導入することを前提としているが、導入に至る経緯は各高野連によって異なっている。改革は、日本高野連が大方針を打ち出し、47都道府県の高野連がそれに従って現実的な方法論で推進する図式である。
夏の甲子園の試合開始時間の変更は「暑熱対策」の一環だが、この施策も、各都道府県高野連がそれに倣って独自の対策をすることが前提になっている。
夏の甲子園に出場するのは49校、試合数は48、選手数は980人だが、地方の選手権大会には日本高野連発表で、3798校が参加している。ベンチ入りしない部員も含めれば部員数は12万7031人に及ぶ。試合数もはるかに多く、「暑熱対策」一つとっても甲子園よりも、各都道府県の大会の方が重要なのは言うまでもない。
各地方大会ではどんな対応があった?
今夏の選手権大会の前に、各都道府県の高野連の多くは新たな「暑熱対策」を打ち出した。その例をいくつか紹介する。
青森県、宮城県、新潟県、愛知県、岐阜県、三重県、広島県は、熱中症警戒アラートが発令された場合は、試合を中止にすることを決めた。
福岡県は開会式を「自由参加」としたうえで、入場行進を取りやめた。千葉県、愛知県、和歌山県、香川県、神奈川県、三重県などは開会式直後に試合を開催せず、三重県はそのうえで硬式野球で使用しない「四日市ドーム」で開会式を実施した。静岡県、愛知県、山梨県、京都府などでは第1試合の開始時間を早めたり、第2試合を遅らせて2部制にするなどした。
以上のように各都道府県の高野連は、日本高野連に倣って現実的な対応を始めている。