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甲子園7回制に猛反対…大阪桐蔭・西谷浩一監督がじっくり語る“決定的な理由”…早稲田実業の監督も困惑「新ルール決まるスピードが速い」
text by
柳川悠二Yuji Yanagawa
photograph byKYODO
posted2024/08/07 06:02
大阪桐蔭の西谷浩一監督。高校野球「7回制」に反対の理由をじっくり聞いた
「たとえば完全試合をやられた場合、7回制だと3番打者で試合が終わる。4番以下の選手は2回しか打席に立てないことになりますよね。現代では145キロ以上の投手を複数抱える学校も多いじゃないですか。7回を球の速い投手3人がかりでこられたら、手が出ないんじゃねえかなって思いますね」
つまり私立と公立の格差が広がるということだろうか。
「私立だって大変な学校はいっぱいありますよ……」
大阪桐蔭などの強豪校が、思いがけず公立校の変則左腕に苦戦を強いられるようなケースはある。日本一を常に目標に掲げるような学校であれば150キロを打ち返す練習はいくらでもしていても、軟投派の変則投手を打ち崩す練習はなかなか取り組めない。それゆえの苦戦だろうが、万が一、そうした投手に“はまった”場合、7イニングでは攻略が難しいケースも出てくるかもしれない。
「私立と公立の差は広がる」
京都国際の小牧憲継監督にそんな話題をぶつけると、次の反応が返ってきた。
「1度のミス(失点)で取り返しがつかなくなることはあるかもしれません。ただ、基本は7回制の導入によって私立と公立の差は広がるんじゃないかなと思いますね。やっぱり、選手をたくさん抱えているところの方が安定して戦えると思います」
小学生の野球は基本的に7回制だ。中学生の硬式野球となると、公式戦で7回制の試合を一日に2試合こなすことも頻繁にある(その場合は、投手の球数制限やイニングの制限がある)。
「それやのに高校野球が7回でいいのか、ってなりますよね。時間を短縮するのが目的であれば……これはせっかく甲子園に出場した球児にとってはかわいそうなことかもしれませんが、コールドを採用する方が得策ではないでしょうか」
U−18野球W杯などで7回制が導入されているのは、10日間で9試合をこなさなければならないからだ。それよりも日程が長く、最大でも6試合となる夏の甲子園で、7回制の導入を急ぐ必要などあるのだろうか。
優先すべきは改革案に対する現場の声に耳を傾けることだ。
〈「7回制にメリットある」編へつづく〉