甲子園の風BACK NUMBER
甲子園7回制に猛反対…大阪桐蔭・西谷浩一監督がじっくり語る“決定的な理由”…早稲田実業の監督も困惑「新ルール決まるスピードが速い」
text by
柳川悠二Yuji Yanagawa
photograph byKYODO
posted2024/08/07 06:02
大阪桐蔭の西谷浩一監督。高校野球「7回制」に反対の理由をじっくり聞いた
酷暑の中で行われる夏の甲子園は何かと批判の対象となりがちだが、かように高校球児に対する配慮や対策は実施されてきた。
「日程(スケジュール)も含め、いろんなことをしていただいている。他の競技の状況は私も勉強不足ですが、たとえばサッカーやラグビーはずっと(炎天下で行われるゲームに)出ずっぱりですよね。その点、野球はベンチで休憩する時間もありますし、クーリングタイムも考えてもらっていますよね。(大阪桐蔭の)他の部活動の先生の話を聞く限り、野球はすごく考えていただいていると思います」
「日程は十分に配慮していただいている」
7回制だと「野球の本質が変わってくる気がする」と西谷監督は言う。
「そこ(イニング数)はいじらずに、他の部分で対策を練ればいいんじゃないか、と思いますね。DH制の導入もその候補でしょうし、ベンチ入りメンバーの数を増やすことも一案でしょうし。日程に関しては、十分に配慮していただいているような気がします」
2021年に球数制限が導入されたとはいえ、現状のスケジュールは、よほど雨などによる順延が続いて日程が詰まらない限り、球数制限に抵触することがないほど緩和されている。たとえばサッカーのインターハイは、8日間しか大会期間が用意されず、1回戦から登場する学校が決勝に進出した場合、6試合を戦うという強行軍だ。球児の健康を守る暑さ対策、疲労対策は既に十分過ぎるほど施されているのではないだろうか。これ以上、対策が不十分だという声があがるのなら、屋根のない球場で全国大会を開催することは不可能だろう。
早稲田実・和泉監督「新ルール決まるスピードがとにかく早い」
昨年は神奈川の慶應が107年ぶりの全国制覇を遂げたが、今年の夏は第1回大会から出場する東京の名門が登場する。清宮幸太郎が1年生だった2015年以来、9年ぶりとなる西東京代表の早稲田実だ。
「浦島太郎状態です」
そう笑ったのは和泉実監督だ。06年には斎藤佑樹を擁し、駒大苫小牧との決勝は延長15回を戦って引き分け再試合となり、翌日、優勝旗を手にした。9年前には球数制限もなければ、タイブレークもなかった。コロナ禍を経て、出場校に課せられる細かいルールも増えている。
「斎藤の頃が大昔に感じられるぐらい、高校野球が大きく変わりましたよね。新しいルールが決まっていくスピードがとにかく早い印象がある。遠からずそうした7回制の時代が訪れるのかなとは思いますが、今年のうちなんかはどちらかというと8回、9回で試合をひっくり返して勝ち上がってきた。それが7回までとなると、うちは今回、甲子園には来られなかった。意外と先行逃げ切りの試合って少ないんですよ……当然、戦い方は変わってきますよね」
7回制で戦い方…どう変わる?
タイブレーク導入や新基準バットの導入とはまた違う意味で野球が変わる。和泉監督も、西谷監督同様に3回打席に立てる選手と、最悪2回しか立てない選手がいることに違和感を抱いている様子だ。