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バスケ代表・河村勇輝(23歳)が掴んだ“現地ファンの心”「相手ファウルに会場ブーイング」「驚きの股下パスも」…それでも残る「日本の課題」は?
posted2024/07/30 17:17
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Getty Images
大健闘の末の、大敗。
その理由と向き合うことが、日本バスケットボール界の行方を左右する。
7月27日、パリオリンピックの初戦でW杯王者ドイツと戦った日本は、前半は世界大会における過去最高レベルの戦いを見せた。最大で16点差をつけられたものの、第2Q残り2分56秒からの9連続得点で盛り返し、8点差で折り返した。
苦手とする高さの面でも奮闘した。ドイツの平均身長201cmに対して、日本は194cm。にもかかわらず、相手よりも3本多い39本のリバウンドを獲得した。「日本の高さは永遠の課題」と言われたのは過去の話。そう思わせるほど、これまでと異なるレベルの戦いを日本は見せつけた。
ただ、にもかかわらず最終スコアは77-97。20点差をつけられた。昨年のW杯でもドイツとは対戦しており、そのときは18点差での敗戦だった。結果的にはあのとき以上の点差がついていた。
内容と結果がかみ合わない。実に不思議な一戦だった。
裏を返せば、この試合は日本チームの収穫と課題が顕著に見えたゲームだったとも言える。
現地ファンの心を掴んだ河村のプレー
収穫のひとつが、司令塔の河村勇輝が存在感を見せたことだろう。
7月19日、大会前に行なわれたドイツとの強化試合での河村からは、初戦の相手に手の内を隠しながらプレーしたため、普段はあまりないような「迷い」が見られた。
しかし、本番では違った。強化試合の後に八村塁からかけられたという「オマエが試合をクリエイトするんだ」という言葉通りに、良いパフォーマンスを見せていった。
圧巻だったのは、第2Qの残り2分1秒の場面だ。相手のエースで208cmの巨漢でもあるフランツ・ワグナーの股を通すバウンドさせたパスで、ジョシュ・ホーキンソンの得点をアシスト。先述した日本の9連続得点もこのタイミングで生まれた。
今大会に出場する全選手のなかで河村は2番目に低い172cm(※最も低いのが167cmのキャプテン富樫勇樹)だ。
ただ、高さのディスアドバンテージを嘆くのではなく、低さを逆手に取ったところに素晴らしさがあった。しかも“低さのアドバンテージ”を活かした場面はそれだけではなかった。