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バスケ代表・河村勇輝(23歳)が掴んだ“現地ファンの心”「相手ファウルに会場ブーイング」「驚きの股下パスも」…それでも残る「日本の課題」は?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2024/07/30 17:17
敗れはしたもののドイツ戦で現地ファンの心を掴んだ河村勇輝。一方で河村の活躍からは代表チームの課題も浮き彫りに
バスケットボールはコンタクトの多いスポーツだ。体格に勝る選手たちと戦い続ければ、当然体力は削られていく。ファウルがかさんだアクシデントがあったとはいえ、この試合の河村の出場時間は1試合40分のうち25分23秒。試合を通じて休む時間が多かったのもパフォーマンスが低下しなかった一因だろう。
翻って、他の選手たちはどうか。
この試合における日本の2人のNBA経験者である八村塁と渡邊雄太、攻撃力だけではNBAでプレーしても不思議ではないといわれているホーキンソンの出場時間は以下の通りだ。
渡邊:34分4秒
八村:36分19秒
ホーキンソン:35分32秒
ちなみにドイツで最も長い時間プレーしたのが、絶対的存在のシュルーダーなのだが、それでも28分9秒だった。長時間の出場……しかも格上との戦いで体力を奪われたことで、終盤のパフォーマンスが落ちたことは試合後の選手たちの証言からも明らかだった。
確かに、バスケの世界では、ビッグゲームになると選手をローテーションさせるのは難しいと言われる。NBAでもプレーオフのような試合では主力選手が長く出ることが当然、多い。オリンピックのような大会でそういう傾向が見られるのは「仕方がない」という意見もわかる。
しかし、そうした意見は前提を忘れている。
ドイツ戦で感じたホーバスHCの「ブレ」
日本はまだ選手個人の能力でも、体格でも強豪国に大きく引けを取っている。つまり、日本の選手たちが相手の主力と同じ時間だけプレーしているようでは、後半以降、パフォーマンスが落ちていくのは必然なのだ。
加えて気になったのが、そこにトム・ホーバスHCの「方針のブレ」が見えたことだ。
スーパースターもいなければ、MVPに選ぶべき選手もいない。日本は「スーパーチーム」であり、「MVPは全選手」というのがホーバスHCの方針だ。
彼は前回の東京五輪では女子の日本代表を率いて銀メダルを獲得したが、そのときも「全員バスケ」を繰り広げている。決勝戦であっても全選手が得点するというオリジナリティのあるチームを作ったからこそ、評価された指揮官なのだ。