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「ボクサーとして格が上がった」那須川天心、会心の3回TKO劇…元世界王者・飯田覚士がうなった“驚異のスピード”とは?「十分世界を狙える」
posted2024/07/23 17:02
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
その成長スピードには目を見張るものがある。
ボクシング転向4戦目となった那須川天心は7月20日、東京・両国国技館においてWBA世界バンタム級4位ジョナサン・ロドリゲス(アメリカ)と54・4kgの契約ウエイトによる初の10回戦を行ない、3回1分49秒TKO勝ちを収めた。前回は相手が途中棄権してのKO勝利だったものの、今回はしっかり倒した形でのフィニッシュ。WOWOW「エキサイトマッチ」の解説を務めるなど世界のボクシングに精通し、1年3カ月前のボクシングデビュー戦をNumber Webにて振り返ってもらった元WBA世界スーパーフライ級王者の飯田覚士氏にあらためて解説を依頼すると、彼は頷くようにして言った。
ボクサーとして格が上がった
「ボクサーとしてひと皮むけたのではないか。格が上がった感じを受ける」
格が上がったとは、どういうことか。
「キックボクシングとボクシングでは距離感が違うなかで、デビュー戦からその距離で戦えていたことに驚きがありました。ただまだ腰が高かったんです。だからパンチに拳の威力を伝えられない側面もあったなか(今年1月の)3戦目では修正できていました。腰の位置というのは蹴りを使うキックと(拳のみで闘う)ボクシングでは全然違う。もっと時間が掛かると思っていたのに、そこもクリアできていました。そしてジョナサン・ロドリゲス選手との今回の4戦目。腰の据わりが安定したことで下半身の強さをパンチの威力に乗せることができていました。そのことによって様々な効果が生み出されていたと感じます。その一つがボディー打ち。スピードに乗って、威力もある。ボディーだけで倒せる力がありました」
パンチをもらわずして、倒し切るボクサーに。世界の上位ランカー相手にしっかり証明できたことが那須川の評価を引き上げた。
飯田の指摘どおりこれまで以上に重心を落とした感があり、「腰が据わっている」ことで相手ボディーにも打ち込みやすい。1ラウンドから左のボディーストレートをスッとロドリゲスの腹に入れていく。
飯田がうなった那須川天心の“スピード”とは?
下半身のパワーを、パンチのスピード、反応のスピードにつなげていくと最早、WBA4位はその速さについていけなくなる。上と見せかけて下、下と見せかけて上。2ラウンドでも面白いように那須川のパンチが当たった。ただ、飯田がうなるスピードというのは、ほかの点にあった。