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結婚発表・藤田菜七子26歳は“男性中心の競馬界”をどう変えたのか? 報道陣が殺到「菜七子フィーバー」から女性騎手の牽引役になるまで 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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posted2024/07/17 11:02

結婚発表・藤田菜七子26歳は“男性中心の競馬界”をどう変えたのか? 報道陣が殺到「菜七子フィーバー」から女性騎手の牽引役になるまで<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

7月10日に自身のSNSで結婚を発表した藤田菜七子(26歳)。14日には福島競馬場で結婚発表後初勝利をあげた

その人柄は「真面目で、礼儀正しく、研究熱心」

「藤田菜七子以後」にJRAの女性騎手が増えたのも、藤田自身が門戸をひろげたからだと言える。

 前出の永島、古川につづき、22年には今村聖奈、23年には河原田菜々と小林美駒、そして今年3月には大江原比呂がデビューし、JRAの女性騎手は史上最多の7人になった。

 藤田自身の勝ち鞍は、20年35勝、21年14勝、22年8勝、23年13勝と一時期より少なくなったが、永島と古川がデビューした21年の3人の女性騎手の合計は28勝(JRAのみ、以下同)、今村が加わった22年は93勝、河原田と小林も加わった23年は136勝と、同年のリーディング3位の横山武史の126勝を上回っている。

 7人の女性騎手のうち、藤田と、まだデビューしていなかった大江原を除く5人が、昨春、騎手控室などでのスマホの不適切使用で30日間の騎乗停止になりながらも、これだけの成績をおさめたのだ。もはや一大勢力である。

 競馬サークルはまだまだ「男社会」ではあるが、女性騎手がこれだけ勝つようになったほか、女性厩務員が珍しくなくなり、さらに、順調なら来年にはJRA初の女性調教師である前川恭子調教師が厩舎を開業する。「女子力」という言葉は普通「女性らしさ」という意味で使われるが、女性たちのパワーという意味での「競馬界の女子力」は、今後ますます高まっていくだろう。藤田はその中心でありつづけるはずだ。

 藤田がデビュー前から憧れの存在として名を挙げていたニュージーランドのリサ・オールプレスは、子育てをしながらリーディングに輝いた。また、昨年短期免許で来日したイギリスのホリー・ドイルと夫のトム・マーカンドのように、JRAでも騎手同士のカップルが誕生するかもしれない。

 以前、藤田に女性騎手最多勝更新に関するインタビューをしたとき、今後の目標を問うと、こう答えた。

「次の1勝です。それを積み重ねて、たくさんの方々に信頼される騎手になりたいです。今後、後輩の女の子も出てくるでしょうから、その子たちにも負けないようにしないといけないですね」

 真面目で、礼儀正しく、研究熱心で、黙々と自己研鑽をつづける。彼女の前に存在したJRAの女性騎手は6人、彼女のあとにデビューした女性騎手も同じく6人。JRAの女性騎手を牽引する立場になったという自覚も強まったはずだ。

 そんな藤田をはじめとするJRAの女性騎手7人のうち、誰が、いつ、どんな馬でGI初制覇を遂げるのか。楽しみに見守りたい。

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