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村上宗隆も山川穂高も指摘した「飛ばないボール問題」その真相を選手に直撃! 多くの打者が証言した感覚とは…なぜここまで本塁打が減るのか?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/06/28 17:15
セパ両リーグで本塁打トップのヤクルト村上宗隆とソフトバンク山川穂高。両者とも「飛ばないボール」について言及していた
それはボールの保管方法だ。
基本的に試合球はミズノ社から定期的に各球団に納品されたものを、球団がそれぞれ球場やクラブハウスの倉庫で保管。試合で使用する分を、毎試合出してくるという形となる。保管場所は使用球場が変わった日本ハム球団以外は、ここ数年は変わらない。
ただ実はボールの管理で、昨年と今年で1つだけ変わったことがあるのだ。
それは製造元のミズノ社がカーボンニュートラルを目指す全社的取り組みの一環として、ボールを1ダース毎に入れている箱を昨年までのコーティングした塗工紙の箱から、今季は段ボール製の箱に変更しているのである。
段ボールは保湿性が高く湿気がこもりやすい。保管時の湿気の影響で、検査当時より湿気を多く含んで反発係数が落ちて、飛ばなくなっている可能性がある。ボールの均質性が落ちて、ブヨブヨする感覚という指摘も保管中に湿気を含んだため、と考えると納得できる。多くの選手が証言するように、去年と今年でボールの飛び方や均質性に変化が出ているとすれば、そうした保管方法の変化がボールに微妙な影響を与えている可能性があるかもしれないということなのである。
「ボールが飛ばない」は今年に始まったものではない
同時にもう1つ、気になるのはボールが飛ばないという声が、今年に始まったものではないということだ。
2022年には当時西武の山川穂高内野手(現ソフトバンク)が「明らかにボールが飛ばなくなっている」と指摘。実際、両リーグの合計本塁打数は21年の1449本(1試合平均1.688本)から、22年には145本減の同1304本(1.519本)まで減少している。
実は山川が「飛ばなくなった」と指摘した22年にも、ボールの保管方法に、もう1つの変化があった。
ボールの個別包装の仕方が、それまでのアルミ箔をビニール袋で包んだものから、「GL BARRIER」という蒸着フィルム素材の袋に変更されているのである。長い間、新しい試合球を下ろすときにはアルミ箔を剥いで取り出すという“儀式”のような手順があったが、いまは袋を破って取り出すようになっている。「GL BARRIER」という蒸着フィルム素材は、お菓子の袋などに使われるもので、保管時の湿度、温度の影響を最小限にし、紫外線の影響による変色も防いで、アルミ箔と同等以上の状態でボールを保管できるとされている。
山川穂高も「飛ばなくなっている」と語る真相とは…
ただ、ボールの包装がアルミ箔から「GL BARRIER」に変更になったその年に、年間の本塁打数は145本減少し、山川は「ボールが飛ばなくなっている」と語っているのだ。