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支配下指名「77人中76番目」からの下剋上…日ハム“次世代エース候補”北山亘基(25歳)はなぜ「ドラフト8位」だった?《交流戦で今季4勝目》
posted2024/06/05 11:04
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
(L)JIJI PRESS/(R)AFLO
2021年ドラフト当日、私はインターネット放送『パラビ』(現在は『ユーネクスト』)のドラフト会議実況中継で、解説席に座っていた。次々と指名される選手たちのプロフィールを簡潔に語り分ける、なかなかの難行である。
その中で私は「京都産業大の北山亘基君がまだ出てませんね」と2度ほど口にしたのを、今でも覚えている。
確かにそれぐらいの投手だった。
打者の手元でガッと来る「伸び感」抜群の速球は、アベレージでも145キロ前後だったし、スライダー、カーブ、カットボール、フォークとの緩急も冴えていた。なにより、登板するたびに、いつも実力を発揮するコンスタントさが信用に値する投手だと見ていた。
そしてようやく彼の名前が会場に告げられた時、ドラフトは8位指名にさしかかっていた。
なぜ「好投手・北山亘基」はドラフト8位だったのか
あるスカウトは北山のドラフトについて、こんな風に語っていた。
「北山のようなピッチャーは、判断が難しいんです。大きな欠点はない。でも、強く推せる材料もない。何年もエースとしてコンスタントに投げ続けた実績は大きな武器になるけど、決め手がなかった」
2021年のドラフトは、大学生の左腕に人材が豊富だった。
今は、西武の左腕エースになっている隅田知一郎(西日本工業大)、リリーフ陣の一角として共に西武投手陣を支える佐藤隼輔(筑波大)をはじめ、ドラフト1位・2位で、5人の大学生左腕が指名されたほとだ。
右の快腕にも、翁田大勢(関西国際大→巨人1位)、椋木蓮(東北福祉大→オリックス1位)などがドラフト有力候補として挙がっていたが、北山投手の実力だって、決してヒケをとるものではなかった。