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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
支配下指名「77人中76番目」からの下剋上…日ハム“次世代エース候補”北山亘基(25歳)はなぜ「ドラフト8位」だった?《交流戦で今季4勝目》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by(L)JIJI PRESS/(R)AFLO
posted2024/06/05 11:04
今季ここまでプロ初完封を含む4勝を挙げている北山亘基。支配下指名選手77人中76番目の「ブービー指名」からの下剋上を期す
時計の文字盤で12時ほどの角度から投げ下ろしてくるのに、そのボールが、地面スレスレから、飛行機の離陸のように浮き上がってくる。
受けていて、「低めの高さ」がわからない。こちらの股間を直撃されそうな、それは、それは「怖いボール」だった。
「北山には、そこまでの精度はないかもしれませんけど、ホームベースの上でガッとホップしてくる強いストレートがあります。あれだけの強烈なストレートを投げられる投手は、そんなにいないはずです。そこには、私の新しい夢があるんです」
プロ球団の半分からは「いらない」という評価
北山亘基投手が、日本ハムに8位指名された時、すでに6球団が「選択終了」を宣言していた。つまり、少々失礼な言い方になるかもしれないが、プロの半分の球団からは「いらない」という評価を受けた投手が今、一軍ローテーションの一角として奮戦していることになる。
今年、4月20日のロッテ戦。わずか116球でプロ初完封を記録した北山投手。しかし、5月6日のソフトバンク戦では、先発の4回途中で6失点。新庄監督から「違う方の北山君が出ちゃったかな」というコメントが発せられた。
「好投の後でしたから、力んだか何かで、ゾーンが高くなったかな。ホップする球質の弊害が出たのかも。でも、彼は自分で考えられるヤツです。考えて、修正して、立て直してこられるヤツです」(勝村監督)
実際、その後は二軍落ちを経て交流戦で一軍マウンドに復帰。3週間ぶりの登板となったカープ戦では5回無失点の快投を見せ、今季4勝目を挙げた。
若い人の成長カーブというのは、決して、右肩上がりのまっすぐのラインじゃない。
いい時もあれば、そうでない時もあって、そんなギザギザのラインの底と頭が、だんだんと高くなってくれば、それでよい。
それが、若い人の「伸びしろ」というやつであり、勝村監督の「夢」であり、日本ハム・北山亘基投手の「隠し持った能力」なのである。